473章 すれ違い

藤原輝矢？

林薫織は眉をわずかに寄せた。なぜか、この名前に妙な親しみを感じた。この人物を、以前知っていたのだろうか？

彼女はゆっくりと目を開け、視線を前の席の少女に向けた。少女は興奮のあまり自分を抑えられず、目からは赤い星が飛び出しそうだった。

「ファーストクラスに行って、サインをもらおうかな？」少女は隣に座っている男の子に尋ねた。

「何のサインだよ？彼がお前の旦那の俺より格好いいとでも？」男の子は軽蔑したように言った。

「正直言って、あなたよりずっと格好いいわよ」

男の子は打撃を受け、怒って言った。「ただおしゃれな服装をしているだけじゃないか。俺だってスターになれば、彼のようにプロのチームに包装してもらえば、彼より格好よくなるかもしれないぞ」

「ふん、冗談言わないで。世界で最も専門的なチームがあなたを包装したとしても、私の輝矢のような雰囲気は出せないわ」少女は彼を一瞥し、どこからか白いTシャツを取り出して、興奮気味に言った。「もういいわ、こんなチャンスめったにないんだから、今日は絶対に彼の直筆サインをもらうわ」

しかし、少女がTシャツを持って通路に出たところで、通りかかったキャビンアテンダントに止められた。「申し訳ありませんが、もうすぐ離陸します。お席にお戻りになって、シートベルトをお締めください」

男の子はそれを聞いて、少女を席に引き戻し、つぶやいた。「もう飛行機が離陸するんだから、余計な混乱を起こさないでよ。それに、そんなバカみたいな様子でTシャツを持っていっても、相手はサインしてくれないかもしれないよ。お前、前から飛行機酔いするじゃん。飛行機が離陸して気分が悪くなっても、俺は知らないからな」

少女は考え込み、確かに自分は飛行機酔いがひどいことを思い出し、一時的に諦めるしかなかった。しかし心の中では、飛行機を降りるとき、あるいは飛行機が成層圏に達して安定したら、藤原輝矢のサインをもらいに行こうと計画していた。これは千載一遇のチャンスだ、逃すわけにはいかない。