第521章 共に踊る

このような宴会は、表面上は娯楽を目的としているように見えるが、実際には実業家や政界の名士たちが交流するプラットフォームとなっている。

このような場では、男性たちはお酒を飲みながらビジネスの話をすることが多く、女性たちの目的はずっと単純で、ゴシップを語り合ったり、女性が関心を持つ話題について話したりすることに尽きる。

このような宴会に、高橋詩織も以前は時々出席していたが、それはレーマンのCEOとしての立場であり、たいてい男性たちの中に混じって、ビジネスの話をしていた。今回はむしろ気楽で、ある会社の社長に近づいたり、政界の要人に接触したりするために心を砕く必要がなかった。

しかし、ビジネスの話と比べると、女性たちの話題も十分に退屈なものだった。

「そのバッグ、どこで買ったの？素敵ね」セレブAが尋ねた。

「これは先週フランスのパリで買ったの。限定品で、世界で50個しかないのよ」セレブBが自慢げに言った。

「まあ、限定品なのね。だからこんなにユニークなデザインなのね。今度海外でショッピングするときは誘ってよ、一緒に行きましょう」

「いいわよいいわよ、どうせ退屈だし、誰かと一緒なら楽しいわ。来週、ロンドンでファッションショーがあるの、一緒に行かない？」

……

高橋詩織はそれを聞きながら、すっかり興味を失った。彼女はブランド品が好きではなく、服装などにもかなり無頓着で、気が向いたときに大量に買い込むことはあっても、普段はあまりショッピングモールに行かなかった。

退屈しのぎに、高橋詩織は目立たない場所に座り、食べ物を食べながら、少し離れたところでとある会社の社長とビジネスの話をしている房原城治を待っていた。彼が早く終わって、自分も早く帰れることを願うばかりだった。

お皿の上の食べ物がほとんどなくなり、デザートを取りに行こうかと考えていたとき、突然頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「なんという偶然でしょう、高橋さん、また会いましたね」

高橋詩織の指が一瞬止まった。その声は見上げなくても誰のものか分かった。彼女は少し悔しく思った。この氷川泉はなぜこうも執念深いのか、どこに行っても彼に出くわすとは。