第510章 氷山男

しかし、何と言っても、ここの景色は素晴らしい。夕食を早めに済ませたため、彼らが海辺に着いたとき、ちょうど日没に遭遇した。太陽の名残りの光が宇宙の雲を照らし、白い雲を美しいオレンジ色に染めていた。見渡す限り、空全体が魅惑的な赤に包まれ、その美しさは言葉では言い表せないほどだった。

この情景は確かに心を奪われるものだが、高橋詩織はもちろん、自分の隣には動く氷の彫刻があることを忘れてはいなかった。そうではないか、この男は先ほどからずっと表情一つ変えず、相変わらず冷たいままで、目の前の美しい景色とは全く不釣り合いだった。彼とこんな場所に来るなんて、本当にこの素晴らしい景色が無駄になってしまう。

房原城治は黙ったままで、高橋詩織ももちろん自分から話しかけることはなかった。それに、彼女は房原城治と話すための話題を見つけることができなかった。