第552章 罪を着せる

冷川財団の宿敵である黒川財団がゲームにいくつかの細かな改良を加えたものの、類似度は90パーセントもあった。明らかに、これは偶然ではなく、誰かが意図的に情報を漏らしたのだ。

では、誰が情報を漏らしたのか?

一時、冷川財団とレーマンの上層部は皆、動揺していた。なぜなら、このゲームはまだ発売されておらず、高い地位にある幹部層だけがこのゲームに触れる機会があり、情報を漏らす機会があったからだ。これに対して、冷川財団とレーマン双方は当然激怒し、特にレーマンは立て続けに緊急会議を開いた。

このソフトウェアの開発のために、レーマンは多大な人的資源を投入したのに、今やゲームソフトが競合他社に盗用されてしまい、高橋詩織は当然不満だった。

彼女は中村旭に臨時調査チームを組織させ、ソフトウェア盗用の件について調査させ、また会社の幹部たちと今後の対策について話し合った。ただ、彼女はこの業界で長年揉まれてきたため、心の中では、たとえ適切な解決策を見つけたとしても、損失は避けられないだろうということをよく理解していた。

その夜、高橋詩織は再び会社本部の主要株主を集め、ビデオ会議を開いた。以前は、レーマンが彼女の指導の下で優れた業績を上げていたため、本部側では、一部の株主が彼女に不満を持っていても、それを表に出すことはなかった。しかし今回は、ゲームソフトの情報漏洩を口実に、一部の株主が我慢できなくなり始めた。

太平洋を隔てていても、その夜のビデオ会議が楽なものになるはずがなかった。中には、今回の情報漏洩事件で会社が巨大な損失を被るなら、このプロジェクトの責任者である高橋詩織にも、逃れられない責任があるべきだと主張する株主もいた。

これに対して、高橋詩織は初めて言葉を失った。その中には意地悪な要素があったとしても、高橋詩織は否定できなかった。この件については、確かに彼女にも責任があった。

ビデオ会議が終わると、高橋詩織は心身ともに疲れ果てていた。彼女は力を込めてこめかみをマッサージし、お風呂に入って、自分をリラックスさせることにした。彼女は心の中で自分に言い聞かせた。大したことはない、今よりもっと厄介な状況も、以前に経験したことがある。

高橋詩織は一晩休んで、ようやく少しエネルギーを回復した。彼女がレーマンのオフィスに入ると、中村旭が怒り心頭で入ってきた。