しかし、薫理が泣き続けるのを見て、氷川泉はついに心を動かされ、高橋詩織の電話番号を探し出して彼女に電話をかけた。
電話の着信音が鳴った時、高橋詩織はちょうどお風呂から出てきたところだった。氷川泉からの電話だと分かると、彼女は考えることなく電話を切った。
彼女は氷川泉が夜遅くに電話をかけてくるのが仕事の件だとは思わなかった。もし私的な用件なら、彼女には彼の電話に出る義務はない。否定できないのは、かつて彼女がこの男性に少しだけ心を動かされたことだが、今や彼には婚約者がいるのだから、彼女は彼との関係を引きずるつもりはなかった。
氷川泉のその婚約者については、彼女の容姿が氷川泉の前妻とそっくりであるにもかかわらず、高橋詩織には何か変な感じがした。どこか違和感があるのだ。実際、高橋詩織の直感は正しかった。