第550章 あなたはママじゃない！

氷川泉は医学を学んだことはなかったが、最も基本的な常識はあった。彼は出血が止まらないことが何を意味するのかをよく理解していた。

男は手術室の外で黙って立ち、手術室の入り口の表示灯を一瞬も目を離さずに見つめていた。時間が無限に引き伸ばされているように感じ、心は何かに激しく焼かれるように、灼熱の痛みを感じていた。

どれくらい時間が経ったか分からないが、ついに手術室のドアが開き、瀬戸麗が出てきた。彼女は顔のマスクを外し、氷川泉の前に来ると、表情はやや重々しかった。

「こんなに早いとは思わなかった」

瀬戸麗のシンプルな一言で、氷川泉は一瞬にして奈落の底に突き落とされた。瀬戸麗は明確に言わなかったが、氷川泉はすぐに彼女の言葉の意味を理解した。

長い沈黙の後、氷川泉はようやく自分の声を見つけ、慎重に尋ねた。「あとどれくらい時間があるんだ？」

「血小板と赤血球の数が急激に減少しています。この進行速度では、私たちに残された時間は最大でも1年です」

「わかった、できるだけ早く適合する骨髄を見つける」

瀬戸麗は氷川泉をじっと見つめ、この男にとってあまりにも残酷な言葉だと知りながらも、事実を告げずにはいられなかった。「薫理ちゃんに合う骨髄を見つけるのは簡単なことではないでしょう。たとえ見つかったとしても、拒絶反応が出る可能性が高いです」

男の瞳の色が沈み、そして頷いた。「それは分かっている」

瀬戸麗の言うとおりだった。薫理の病状を知って以来、彼はあらゆる力を動員して適合する骨髄を探してきたが、今に至るまで見つかっていなかった。

しかし、この唯一の希望を諦め、薫理の命が自分の目の前で少しずつ消えていくのを見るのは、彼にはできなかった。

「提案があります。おそらくこれが現時点で最も効果的な方法でしょう」と瀬戸麗が口を開いた。

「どんな提案だ？」

「久保和美さんは林薫織さんなのではないですか？」

氷川泉はためらった後、頷いた。

「もしそうなら、問題はずっと簡単に解決できます。もう一人子供を作れば、今の問題はすぐに解決するでしょう？」

「臍帯血を使うということか？」