第581章 会わないほうがマシ

薫理は何となく分かったような分からないような様子で頷いた。彼女はまだ幼く、大人の世界をすべて理解しているわけではなかったが、それでもパパとママが一緒にいることを望んでいた。

林薫織はこの話題にこれ以上こだわりたくなかった。正確に言えば、この話題から逃げたかった。彼女は氷川泉を恐れてはいなかった。氷川泉の前では、彼女は自分を武装することさえできた。しかし子供の前では、彼女はどうしても強くなれなかった。

彼女は視線をテーブルの上の童話集に向け、笑いながら話題を変えた。「薫理、ママがお話を読んであげるわ」

子供は元々注意をそらすのが簡単なもので、思わず歓声を上げた。「うん、うん!ママ、白雪姫のお話が聞きたい!」

「いいわよ、まず探してみるわね。この本にあるかどうか」

「あるよ、あるよ!パパが前に読んでくれたけど、途中までしか読んでくれなかったの」

暁美さんは林薫織が目次をめくって長い間見つけられないのを見て、「132ページですよ」と言った。

点滴が終わってしばらくすると、薬の作用で薫理はすでに眠くなっていて、お話を聞きながらすぐに眠りについた。

林薫織は優しく薫理の背中をさすりながら、子守唄を歌っていた。この数年間、彼女はあまりにも多くのことを見逃してきた。これからは必ず彼女にしっかりと償わなければならない。

しかし彼女が知らなかったのは、彼女が一からやり直そうと決心し、世界で最も良いものをすべて薫理に与えようとしたとき、天が彼らに与えた時間はそれほど多くなかったということだ。

「暁美さん、ちょっとお話できますか?」

暁美さんの目に一瞬驚きが過ぎり、それから頷いて、林薫織について病室を出た。

「薫理は本当に普通の風邪なの?」林薫織は尋ねた。

その言葉を聞いて、暁美さんの表情が変わり、林薫織の視線を避けながら、唇に硬い笑みを浮かべた。「はい、林さん。ご存知のように、最近インフルエンザが流行していて、子供は抵抗力が弱いので、感染しやすいんです」

「本当にそうなの?」林薫織は疑わしげに尋ねた。

普通の風邪で薫理がこんなに弱っているなんて、数日見ないうちにこんなに痩せてしまうなんて?

「はい、林さん。信じられないなら、ここの医師や看護師に聞いてみてください」