「どんな手伝い?」房原城治は尋ねた。
「その時になれば分かるわ」
⋯⋯
林薫織は翌日の午後も再びセイント病院に行った。昨日と比べると、薫理の顔色は少し血色が戻り、元気も随分良くなっていた。
「ママ、看護師さんが言ってたよ、明後日には退院できるって」
「じゃあ、もう点滴も薬もいらないね」林薫織は愛情を込めて小さな子の鼻先を軽く指で触った。
「うんうん」薫理は何度も頷いた。「もう点滴したら、手の甲がザルみたいになっちゃう」
「ザルがどんな形か知ってるの?」林薫織は笑いながら尋ねた。
薫理は首を振った。「知らない、テレビでそう言ってたよね?」
林薫織は仕方なく首を振り、メディアが人々に与える影響を認めざるを得なかった。3、4歳の子供でさえ影響を受けているのだから。
幸い、子供に見せるべきでないものではなかった。
「ママ、退院したら、遊園地に連れて行ってくれる?」
「もちろん、問題ないわ。退院したら、どこでも行きたいところに連れて行くわ」林薫織は薫理のぽっちゃりした頬をつまんだ。
「海洋公園にイルカを見に行ってもいい?」
「いいわよ」
「海辺の砂浜で砂の城も作りたい」
「問題ないわ」
「パパも一緒に行く?」
「⋯⋯」
返事の代わりに沈黙が続いた。林薫織の表情が一瞬凍りついたが、すぐに自然な様子に戻り、ちびちゃんの頭を撫でながら小さな声で言った。「パパは仕事があるから、私たちと一緒には行けないの」
「パパが暇だったら?パパは社長だから、自分で休みを取れるでしょ」
「社長だからこそ、仕事を休めないのよ。会社に問題が起きたらどうするの?」
「でも、パパは前に私を連れて出かけたことあるよ。パパは暇なの」薫理はまだ諦めずに言った。
「パパが暇な時に、ママが暇とは限らないでしょ」林薫織は少し間を置いて、試すように尋ねた。「薫理、じゃあパパが暇な時にパパと一緒に行きたい?それともママと一緒に行く?」
林薫織がこう尋ねたのは、薫理の心の中で誰がより大切なのかを探りたかったからだ。
薫理は指を絡ませながら、とても困った様子で小さな声で言った。「パパとママと一緒に行きたい」
林薫織はため息をついた。もういい、この件で子供を追い詰めるのはやめよう。