第615章 薄情者?

氷川泉は口元を上げて微笑んだ。「当然だよ、宝物の王子様はきっとお前のパパより格好いいさ」

林薫織は病室内の大人と子供の会話を聞きながら、思わず胸が痛んだ。彼女の宝物はこんなに小さいのに、こんなにも大きな苦しみを味わっている。天は何と不公平なのだろう!

彼女は必ず娘の病気を治し、健やかに成長させ、結婚して子供を産み、幸せに年を重ねる姿を見届けるつもりだった。

薫理は林薫織が病室に入ってくるのを見て、心が躍り、両腕を広げた。「ママ、抱っこして」

林薫織は前に進み、彼女をしっかりと抱きしめ、優しく背中をさすりながらしばらく慰めてから、笑顔で尋ねた。「うちの良い子は、何してたの?」

「パパがさっき、眠れる森の美女のお話をしてくれたの。ママは前に聞いたことある?」

「ママは聞いたことあるわ」

「パパがママに話してくれたの?」薫理は尋ねた。

林薫織の表情が一瞬凍りついた。目を向けて氷川泉をちらりと見てから、すぐに視線を外し、薫理に首を振った。「違うわ、ママのパパ、あなたのおじいちゃんよ」

「おじいちゃん?」薫理は目をぱちくりさせた。「おじいちゃんはどこにいるの?どうして一度も会ったことがないの?」

子供の無邪気な質問だった。薫理は自分が触れてはいけない人のことを口にしたとは知らなかった。

一瞬にして、病室の雰囲気は氷点下に落ちた。

氷川泉の目が微かに動き、視線は林薫織の顔に釘付けになった。例外なく、彼女の顔に骨身に染みる痛みの色を見た。

林薫織の両親のことは、彼らの間に横たわる越えられない深い溝だった。彼は林薫織が一時の憎しみから、薫理におじいちゃんを間接的に殺したのは彼だと告げるのではないかと本当に恐れていた。

「おじいちゃんは天国に行ったの。だから私たちの小さなお姫様は会えないのよ」

その言葉を聞いて、男の心は少し軽くなった。林薫織が彼への憎しみを子供に向けなかったことに、彼は心から安堵した。

「ママ、目が赤くなってるよ」

「ママは大丈夫よ、ただ砂が目に入っただけ」

「ママ、最近よく砂が目に入るね?ママのために吹いてあげる」

林薫織は薫理としばらく遊んだ後、すぐに薫理は眠ってしまった。

「医者は何て言ってた?」林薫織は尋ねた。

「瀬戸麗はもう制御できている。今のところ大きな問題はない」

「骨髄は?」