そのとき、病床に横たわっていた薫理がゆっくりと目を開け、林薫織を見つめた。
「ママ、どうして泣いてるの?」
薫理が目を覚ましたのを見て、林薫織は心が躍り、素早く手を上げて目尻の涙を拭った。
「ママは目に砂が入っただけよ、泣いてないわ」
薫理は半信半疑で眉をしかめた。病院にも砂があるの?
「お腹すいた?ママが何か食べ物を買ってくるわ」
「ママ、ハンバーガーが食べたい」
「今はダメよ、体が良くなって退院してからにしましょう」
「そう、わかった。じゃあ、脂肪の少ないお粥にする。前に病院にいた時もいつもそれを食べてたよね」
「わかったわ、ママがすぐに作ってくるね」林薫織は立ち上がり、ゆっくりと身を翻した。振り向いた瞬間、涙がこぼれ落ちた。
明らかに、これは薫理が初めて入院したわけではなかった。彼女はセイント病院に何日も入院したことを覚えていた。その時は風邪だと言われていたが、普通の風邪で入院するだろうか?
林薫織よ林薫織、あなたはなんて不注意な、責任感のない母親なのだろう。
真実を知れば知るほど、林薫織は自分を責めた。彼女はゆっくりと病室の小さなキッチンに歩み寄り、米をボウルに入れて洗い始めたが、頭の中は薫理の病気のことでいっぱいだった。
いつの間にか、氷川泉は彼女の後ろに立っていた。ボウルの水があふれているのに林薫織が気づいていないのを見て、男は眉をしかめ、手を伸ばして蛇口を閉めた。
「薫織、焦らないで。子供の病気は今のところコントロールできている。私も方法を考えているところだ」
「いつ発見したの?」林薫織は尋ねた。
「3ヶ月前だ」
「そんなに長い間…」林薫織は振り向いて彼を見た。「適合する骨髄がまだ見つかっていないの?」
白血病の治療には、骨髄移植が最も効果的な方法だ。林薫織は医学を学んでいなかったが、それくらいは理解していた。
「懸命に探しているところだ」
「つまり見つかっていないということね!」林薫織の体がぐらりと揺れた。「あなたでさえ見つけられない、あなたでさえ見つけられないなんて!」
氷川泉の能力を、林薫織はよく知っていた。3ヶ月もの間、彼が適合する骨髄を見つけられなかったということは、それがどういう意味なのか彼女には自然とわかった。