第122章 傍観者は明晰

翌日、夏目初美が再び法律事務所に出勤した時、彼女の手には指輪がはめられていた。

同僚たちはみな、今回は自分たちのボスが本当に結婚間近だということを知った。以前に誤解や摩擦があったとしても、もう完全に雨上がりの晴れ空のようになっていた。

ただ、大江瑞穂がいないため、先頭に立つ人がおらず、彼らは夏目初美をからかうことができなかっただけだ。

また、彼らは好奇心を抱いていた。大江弁護士はどこに行ったのだろうか?

彼女は特別な事情がない限り、遅刻も早退もせず、休暇も取らない人だった。

午後になってようやく、大江瑞穂が事務所にやってきた。

夏目初美は急いで彼女を自分のオフィスに呼び入れた。「瑞穂、就職活動はどうだった?午前中にあの工場を調べたんだけど、周辺の工場も一緒に調べてみたら、あそこはとても乱れていて、労働法が形骸化している灰色地帯だってわかったの。」

「本当に行かないでほしいわ。心配で仕方がないの。他の方法を考えましょう。正義を貫くのはいいけど、自分を犠牲にする必要はないでしょう?」

しかし大江瑞穂は微笑んで言った。「でも、もう採用されたの。今夜から仕事を始めるわ。安心して、初美。私はちゃんとわかってるから、必ず無事に帰ってくるわ、約束する。」

夏目初美はまだ眉をひそめていた。「約束したって意味があるの?しかも夜勤でしょう。もし私だったら、あなたは安心できる?近くに住朋という名前の工場もあるみたいだけど、もしかしたら藤田社長の会社と関係があるかもしれないわ。藤田社長に聞いて、助けてもらえるかどうか確認してから、行くかどうか決めましょうよ。」

大江瑞穂は急いで言った。「もう調べたわ。藤田社長の会社とは何の関係もないの。ただ同じ名前なだけ。こうしましょう。今夜はとりあえず様子を見に行って、状況が良くなければすぐに撤退するわ。それ以降は行かない。それでいい?」

ここまで言われては、夏目初美も何も言えなかった。

仕方なく言った。「わかったわ。でも気をつけてね。何かあったらすぐに連絡して。」

大江瑞穂は答えた。「必ずすぐに連絡するわ。たとえあなたたちのアレアレを邪魔して、あなたの旦那さんに殺されるリスクがあっても、絶対に連絡するわ。」

夏目初美は彼女が話しているうちに、冗談を言い始めるとは思わなかった。