夏目初美は伊藤莉理を無視した。
代わりに携帯を取り出して素早く操作し、メッセージを送信した。
送信を終えてから、やっと莉理の方を見て、淡々と微笑んだ。「莉理さん、大清朝はとっくに滅びましたよ。今は娘も息子も同じ相続権を持っています。しかも私は一人娘で、あなたの息子はただの甥っ子。どう考えても私の相続権が優先されます。私が権利を放棄しない限り、彼に回るものなんて何もありませんよ」
莉理は初美の言葉に一瞬顔を強張らせたが、すぐに笑顔を取り戻した。「それはあなたが決めることじゃないわ。私たち夏目家で、いつからあなたみたいな小娘が物事を決められるようになったの?」
初美は鼻で笑った。「私が決められなくても構いません。法律が決めることですから」
少し間を置いて、「あなたたちが見たのは一軒だけじゃなく、二軒の家でしょう?いいじゃないですか、そうすればあなたたち家族も新しい家に住めるし、将来あなたの息子は二軒も新しい家を手に入れられる。よく考えましたね」
莉理は初美が全て見抜いていることに気づき、もう隠さなかった。
笑いながら言った。「おばあさんも年を取ったし、みんな一緒に住めば、私もあなたのお母さんを手伝っておばあさんの世話ができるじゃない。家族みんなで助け合えるでしょう?将来あなたが実家に帰ってきても、もっと賑やかだし、あなたの夫や義理の家族もあなたに弟がいると知れば、いじめたりしないわ。私たちはみんなあなたのためを思ってるのよ」
初美も笑った。「おばあさんの世話を母に代わって?まるでおばあさんの息子たちが全員死んで、母だけが嫁として残っているみたいな言い方ね。それとも母はおばあさんに育てられたとでも?でもどうでもいいわ。今はあなたたちが母をどれだけいじめても構わない。彼女にはそれだけの価値があるから」
夏目おばあは横で怒りで顔を真っ黒にした。「このバカ娘、誰に死ねと言ってるんだ。正月早々、自分の実の父親に呪いをかけるなんて、天罰が下るぞ!」
双葉淑華は悲しそうに泣き始めた。
希実はこんな言葉を言ったことがない...それに二軒の家って何?彼女は知らなかった。
初美はおばあの言葉も淑華の涙も無視した。