第192章 人之常情 責められない

工藤希耀は夏目初美が安らかに眠っているのを確認してから、そっと寝室を出て、キッチンへ向かった。彼女のために鶏スープでも作ろうと思ったのだ。

おかゆは食欲がないようだったから、他に彼女が食べられそうなものを作ろう。

しかし、遠山陽介がまだ帰っていないのを見て驚いた。陽介は希耀が出てくるのを見ると、恥ずかしそうな顔で近づいてきた。「耀兄さん、誤解なんです。説明させてください。聞きたくなくても、信じてくれなくても、説明する義務があると思うんです」

希耀はこの問題をごまかしたり、逃げたりすることはもうできないと悟った。

本来なら、ごまかしたり逃げたりするのは彼のやり方ではなかった。ただ、最も大切にしている初美と陽介の両方に関わる問題だったから、無意識のうちに自己欺瞞を選んでしまったのだ。

今、陽介が説明したいと言うなら、まずは彼の話を聞こう。

希耀はうなずいて、「座って話そう」と言った。

兄弟は並んで座り、陽介はすぐに話し始めた。「耀兄さん、僕は...本当に兄さんが思っているようなことじゃないんです。不純な考えはないし、何かを壊そうとも思っていません。誰にも知られるつもりもなかった。自分を抑えようと本当に努力してきたんです...でも...」

「できるだけ早く誰かと付き合って、真剣に関係を築くつもりです。僕ももう若くないし、ずっと一人だったから、時間が経つとホルモンの影響を受けるのは当然です。誰かができれば、今の自己嫌悪も笑い話になるでしょう。きっと後悔することになると思います」

「だから耀兄さん、気にしないでください。これで何か問題が生じることもないはずです...僕は本当に兄さんを大切にしています。この10年の絆も大切です。僕のせいで兄さんと嫂さんの関係に影響が出るのは望んでいません。兄さんを失いたくない。でも、もし僕に会いたくないなら、遠く離れて、二度と姿を現しません」

希耀は陽介の話が終わるのを待った。

そして静かに口を開いた。「陽介、僕も君を大切にしている。この10年の絆も大切だ。君はいつも僕が君に全てを与えたと言うけど、もし君が僕と一緒にこの道を歩んでくれなかったら、僕も今日まで続けられなかったかもしれない」