すでに話を打ち明けたことだし、遠山陽介は人当たりの良さなら誰にも負けない男だった。彼が心を開けば、誰に対しても春風のような心地よさを与えることができた。
加えて夏目初美も協力的な姿勢を見せていた。——彼女は今や一人で初瑶を経営し、順調に成長させている。様々な人と友好的に付き合うことは、彼女にとっても基本中の基本だった。
車内の雰囲気は自然と良くなり、次第にリラックスしたものになっていった。「でもこれで、お兄さんは二人分の義兄としての威厳を振りかざせるようになったね。二倍のご祝儀なんて安いものでしょ?」
「そうだな。これからは耀兄さんと一鳴、二人の義兄になるわけだ。他の人の前では言えないけど、あの二人の前では完全に胸を張って歩けるようになる」
「あのね、お兄さん、希耀はずっとお兄さんだったのに、急に格下げされたら、きっと心の落差を受け入れられないと思うの。だから、彼の前では……ね、あまり義兄の威厳を振りかざさないで、むしろ一鳴の前で思いっきり振りかざすのはどう?」
「初美、つまり他人を犠牲にして自分が助かろうってことか?」
「ははは、お兄さんが分かってくれればいいの。わざわざ口に出さなくても。だって一鳴は元々あなたたち三人の中で一番年下だし、美咲だって一番年下でしょ?彼だけが傷つく世界になっても、何か問題ある?」
「まあいいだろう。一鳴が一番年下なんだから。もし不満があれば、拳で語ればいい。どうせ彼は俺たちや耀兄さんには勝てないし……」
兄妹が冗談を言い合ううちに、初美は少し暑く感じ始め、車の窓を下げて外に顔を向け、深呼吸をした。
そして思った。岡山市の空気は本当に良いな。
初美と陽介が車を停めて火鍋店に入ると、工藤希耀はすでに個室で待っていた。
二人が笑顔で、リラックスした様子を見て、希耀は二人の話し合いがうまくいったことを察した。言うべきことはすべて言い合えたのだろう。彼は微笑んで言った。「どうしてそんなに嬉しそうなの?道で金でも拾ったの?こっちに座って、初美はここ、陽介はそこに座りなよ」
初美と陽介は笑いながら、それぞれ希耀の両側に座った。