口笛を吹く人もいた。
工藤美咲が遠山陽介と双葉俊哉を責める声も聞こえてきた。「陽介兄さん、大いとこ、あなたたちどうしたの?30分や1時間も持たせるなんて期待してなかったけど、せめて20分くらいは持たせてよ?結局10分も持たなかったじゃない。わざとでしょ?」
それに対して陽介は笑いながら弁解した。「本当に精一杯やったよ、美咲。敵が狡猾すぎたんだ。ほら、今でも赤い封筒をばらまく準備をしているよ!」
すぐ後に太田一鳴の声も聞こえた。「はは...美咲、今日頑張って傘を支えないと、将来自分の傘の柄まで壊されるかもしれないからね...義兄は本当に手ごわいよ!」
「つまり、あの義兄は手ごわいけど、こっちの義兄は手ごわくないってこと?」
「いや、陽介、そういう意味じゃなくて、ただ...ただ...」
夏目初美は思わず笑みを漏らし、残っていた恥ずかしさも喜びに取って代わられた。
そして彼女は工藤希耀の首に腕を軽く回し、彼に抱かれたまま、一歩一歩、安定した確かな足取りで外へと歩いていった。
ホテルの外には長い列をなす結婚式の車列がすでに停車していた。
先頭は白いロールスロイスで、白いバラで作られた大きなハートがボンネットを飾り、今日のメインウェディングカーであることを示していた。
その後ろには白一色の、果てしなく続く様々な高級車が並んでいた。
希耀が初美を抱えて車に乗り込むと、自動車ショーよりも豪華な車列が一定の速度で市外へと走り出した。
この壮大な光景に、通りがかりの歩行者や車両も思わず足を止めて見入り、写真やビデオを撮影していた。このような規模の結婚式は、神戸市でも珍しいものだった。
一体どこの名家の大物が結婚式を挙げているのだろうか?
通行人だけでなく、神戸市のメディアも多数この結婚式を追跡取材しており、見出しまで考えていた。独占写真を撮って、一刻も早く報道し、アクセス数を稼ごうと待ち構えていた。
今日の主役である希耀と初美は、この瞬間、お互いの目にはただ相手しか映っておらず、注意もお互いにだけ向けられていた。
外の世界のすべては、彼らとは無関係であるかのようだった。
希耀は車が動き出すとすぐに、中央の仕切りを上げ、両手で初美の細い腰を抱え上げた。