第281章 結婚式(下)

しかし、さらに予想外で衝撃的だったのは、デッキに設置された宣誓の場所だった。なんと、何万本もの白いバラとチューリップで作られた小さな教会だったのだ。

陽の光を浴びて、一輪一輪の花々が思い思いに咲き誇り、まるで夢の中のような美しさだった。

夏目初美は思わず目頭が熱くなった。

希耀は以前、彼女に最も盛大で忘れられない結婚式を挙げ、彼女をこの世で最も幸せな女性にすると言っていた。彼は確かにそれを実現したのだ!

遠山陽介は彼女の感動を感じ取り、低い声で言った。「結婚式の準備や進行について、耀兄さんは全て自ら関わっていたんだ。妹をこんな義弟に託せるなら、兄として安心だよ」

初美は鼻をすすり、「彼ってけっこう秘密にするのね。これ全部知らなかったわ。さっき上がってきたとき、予備の階段を使ったのは、前の人が多くて不便だからだと思ってたけど、実は私にサプライズをくれるためだったのね?」

陽介は笑った。「前もって知らせたら、サプライズにならないだろう?さあ、正式な入場の時間だ」

初美はようやく気持ちを整え、彼の腕を取り、一歩一歩と赤い絨毯の端まで歩き、新郎の元へと向かった。

そこでは、工藤希耀が幸せに満ちた表情で待っていた。

陽介が初美を彼の手に渡すと、希耀はすぐに初美と指を絡ませ、笑顔で陽介に小声で言った。「陽介、ありがとう」

陽介は微笑み返し、夫婦二人だけに聞こえる声で祝福の言葉を述べた。「末永く幸せに、そして早く子宝に恵まれますように!」

そして数歩で脇の階段を降り、主賓席に着席した。

司会者は引き続き熱意溢れる様子で式を進行した。「さあ、最もハンサムな新郎が最も美しい新婦の手を取りました…」

その後、特別に招かれた神父が宣誓の儀式を執り行った。

「工藤希耀様、あなたは夏目初美様を妻とし、彼女と婚姻の契りを結び、病める時も健やかなる時も、貧しき時も富める時も、またいかなる理由があろうとも、彼女を愛し、世話をし、尊重し、受け入れ、生涯彼女に忠実であることを誓いますか?」

希耀はほとんど即座に答えた。「誓います!」

声は力強く、揺るぎなかった。