第324章 皆が彼の後ろ盾と頼り

西園寺家の後ろで起きたこの一連の出来事について、夏目初美たちはもちろん知らなかった。

もし知っていたら、きっと皆が「悪い竹から良い筍が出る」と感嘆せずにはいられなかっただろう。

あの老人のような、始めは乱れ終わりは捨て、情も義理もない父親と、西園寺夫人のような自己中心的でわがままな母親から、西園寺誠一のような道理をわきまえた息子が育つなんて、まさに信じられないことだ!

初美と工藤希耀は飛行機から降りるとすぐに、遠山陽介を車椅子で押し、すでに待っていた運転手に乗せてもらって、工藤家の本邸へ戻った。

これは三人が飛行機の中で相談して決めたことだった。

本来、希耀の考えでは、陽介にも直接天海湾に住んでもらうつもりだった。どうせ家には十分な部屋がある。

それに永谷姉さんがいて世話をしてくれるから、彼と初美が家にいなくても、陽介が飢えたり、何か不便があったりする心配はない。

初美はそれを聞いて少し不便かなと思ったが、考え直してみると、口では実の兄と呼びながら、行動ではもじもじして皆を居心地悪くさせるのは意味がない。

もちろん、堂々としているべきだ。

そこで彼女も笑いながら陽介を説得した。「お兄さん、私たちと遠慮しないで。ちょうど私は今手持ちの事件がないから、毎日スープを作って、永谷姉さんにも豪華な食事を用意してもらって、しっかり栄養をつけましょう」

しかし陽介はどう説得しても、天海湾に住むことを拒んだ。

自分の家に帰ると主張して、「耀兄さん、初美、二人とも忙しいのに、私が邪魔をするわけにはいかない。これは大した怪我じゃないし、せいぜいあと二、三日休めば、岡山市に戻るつもりだ」

「この数日見ていると、木下沢のやつはまだ経験が足りないようで、心配で仕方がない...世話をしてくれる人がいないわけじゃない、家政婦だって人間だろう。私は静かなのが好きだって知ってるだろう...本当に遠慮してるわけじゃない、自分の兄と義姉、自分の妹と義弟に何を遠慮することがある?」

初美と希耀は口が乾くほど説得したが、効果はなかった。

最後に希耀は妥協案を考え出した。三人とも工藤家の本邸に戻ることにした。「ちょうど美咲の様子も見に行けるし、彼女が本当に手綱の外れた野馬のように、方向を見失わないようにね!」