松本晴子の携帯から橋本燃の姿を捉えた後、温井時雄はこの宝石店に向かった。
彼はショッピングモールのVIP通路から入り、橋本燃が物を盗んだと濡れ衣を着せられる場面を目撃した。
あの女性の実力で、まだ物を盗む必要があるのか?
彼女が本当に盗もうとしたら、人に見つかるだろうか?
彼は群衆の中に隠れ、彼女がこの危機をどう切り抜けるか見守っていた。
結果は予想通り、彼女は場を爆発させた。
しかし最後に彼が全く予想していなかったのは、彼女が宝石店の削除された監視カメラの記録を復元できるということだった。
さらに彼が予想していなかったのは、伊藤千恵たちが橋本燃を陥れたと思っていたが、実は裏で計画を立てていたのは松本晴子だったということだ。
松本晴子の純粋で無害な顔を思い浮かべ、温井時雄は両手を強く握りしめ、手の甲の青筋が浮き出た。
彼の長年の感情は、本当に間違った相手に向けられていたのだろうか?
車が警察署の前に停まり、温井時雄は目の前のドアを見つめ、少し躊躇した後、ドアを開けて車から降りた。
警察署内では、監視カメラの映像が証拠としてあったため、松本晴子たちも抵抗せず、供述はスムーズに記録された。
温井時雄が入ってきたとき、松本晴子は壁際のベンチに座って待っていた。
温井時雄が入ってくるのを見て、松本晴子はすぐに涙を流した。
「時雄、どうしてここに?ごめんなさい、あなたに恥をかかせてしまって」松本晴子は悲しそうに自責の念を示した。
「温井社長、晴子に怒らないでください。晴子はおばあさまが橋本燃に殴られて彼女の前で跪かされるのを目の当たりにし、弟も橋本燃に腕を脱臼させられて数日間入院したんです。橋本燃は武術が強くて、彼女は勝てないから、この方法で橋本燃を陥れて、教訓を与え、今後あんなに傲慢にならないようにしようと思ったんです」坂本涼子は温井時雄を見ながら説明した。
「涼子、私のために弁解しないで。燃がどんなことをしたとしても、私が悪い考えで彼女を懲らしめようとするべきではなかった。警察の教育を受けて、自分の過ちを深く認識しました。法律がどんな罰を与えても、私は喜んで受け入れます」
松本晴子の美しい顔には自責の念が満ちあふれ、その哀れな様子は周りの人々の同情を誘った。