橋本燃が振り返ると、伊藤千恵を先頭とする四人の美女が二階の階段に立っていた。
伊藤千恵、坂本涼子、松本晴子、中村暁歓の四人は華やかな服装で、おしゃれで高貴な雰囲気の美女たちが一列に並び、瞬く間にすべての人の視線を集めた。
その中でも特に目を引く美貌の松本晴子は、すぐに客たちに認識された。
「あれは温井時雄が最も愛している女性、松本晴子じゃないか?」
「彼女が松本晴子よ、とても美しいわね。温井時雄が彼女にあんなに夢中なのも無理ないわ」
「松本晴子はまるで艶やかで魅力的な牡丹の花のようだ。彼の前妻は痩せこけて未成年のようだった。私が温井時雄なら、松本晴子を選ぶね」
「……」
周囲の人々から一方的な賞賛を聞いて、松本晴子の心の虚栄心は大いに満たされ、優しい声で伊藤千恵を叱った。
「千恵、そんな不機嫌な態度で店員さんに話しかけないで。彼女たちも生活のために働いているのよ。5000万円の寶石の紛失は大事件だから、私たちは彼女たちに協力しなければならないわ」
松本晴子はそう言いながらバッグを店員の前に差し出した。「よく調べてください」
「松本さんは本当に美しくて優しいですね。松本さんがたかが数千万円の寶石に目をつけるはずがないことは分かっていますが、公平を期すために失礼させていただきます!」
店員は松本晴子のバッグを確認し、敬意を込めて言った。「松本さん、ご協力ありがとうございます。あなたのバッグには私たちの紛失した寶石はありませんでしたが、寶石が見つかるまで、松本さんはしばらくここを離れることができません。休憩エリアでお待ちいただければ幸いです」
「あなた何様のつもり?私たちの時間がどれだけ貴重か分かってる?」坂本涼子は不機嫌そうに言った。
「もういいわ、涼子。彼女たちを困らせないで、協力しましょう。後で豪華な食事をおごるから」松本晴子は優しく宥め、坂本涼子の手を引いて休憩エリアへ向かった。
「燃、あなたもここで寶石を買っているの?なんて偶然!」松本晴子は休憩エリアに座っている橋本燃を見て、喜びに満ちた表情で優しく言った。
休憩エリアに座っていた橋本燃は、テーブルの上のスイーツを食べながら、松本晴子たちの茶番劇を静かに観察し、松本晴子の「いい人」を演じる下手な芝居を黙って見ていた。