第117章 彼女の命乞いに感謝すべきか?

橋本燃は手首の時計を掲げて言った。「結婚式で、あなたは誰かに頼んで私の時計を汚し、密かにあなたが買った新しい時計とすり替えたけど、あなたが知らないのは、私はもともとこのような新しい時計を持っていたということ。

昨日あなたがすり替えさせた時計は、私自身のものだった。昨日の夜、あなたの前で拭いていたその時計こそが、温井時雄と松本晴子が私にくれた時計だったの。

温井時雄はずっとあなたを悪人だと思っていて、彼はずっと私を嫌っていたのに、突然親切にこんな高価な時計をくれるなんて、中にはきっと非常に隠密な位置追跡システムが入っているはず。

だからあなたの前でこの時計をつけ直したの。そうすれば、あなたが私に対処するとき、自分ですり替えたものを疑うことはないし、同時に、私は温井時雄という切り札の助けを得ることができる。

案の定、温井時雄はここを見つけることができた。沢田慕人、もう無駄な抵抗はやめて、早く罪を認めて法に従い、あなたが殺した罪のない人々に懺悔することをお勧めするわ。」

橋本燃の身体から発せられる死神が命を刈り取るような危険な気配を見て、温井時雄の目の奥に濃い驚きの色が閃いた。

つまり彼女が沢田慕人と結婚したのは、沢田慕人を愛していたからではなく、彼に近づいて彼を排除するためだったのか?

沢田慕人のような計算高く、完璧な偽装をする人物でさえ、彼女に惑わされていたのか?

そう考えると、温井時雄は自嘲気味に笑った。彼が彼女の駒として3年間過ごし、彼女に本拠地を直撃されなかったのは、彼女の命を奪わなかった恩に感謝すべきなのだろうか?

「以前、あなたは温井時雄を愛していないと言ったとき、私はまだ信じられなかった。あなたが身分を隠して温井時雄に3年間嫌われていたのは、きっとあなたが彼を深く愛していたからだと思っていた。

今、あなたが本当に彼を愛していないことを信じるよ。本当に愛している人がいるなら、どうして自分の部下を全員撤退させて、温井時雄の部下だけを残して一緒に死に向かわせるだろうか!」

沢田慕人の言葉に、温井時雄の顔は瞬時に炭のように黒くなった。

なるほど、彼がさっき入ってきたとき誰も見なかったのは、橋本燃が彼女の部下を撤退させていたからだ。

待てよ、彼女の部下が撤退した!