第135章 橋本燃の後ろ盾

「橋本燃、よく聞け。お前がどれほど神秘的で扱いにくい存在だろうと、晴子を死に追いやったことは許さない。必ず晴子の後を追わせてやる。お前が松本家に復讐しようとする陰謀も、絶対に成功させはしない。松本家は俺が守る」温井時雄は憎しみに満ちた眼差しで橋本燃を睨みつけた。

見聞の広い燃だったが、時雄の瞳に宿る冷たい憎悪に背筋が凍るほど怯えた。それでも彼女は背筋をピンと伸ばし、少しの狼狽も見せまいとした。

「それはあなたに力があるかどうかですね」燃は冷ややかに山本煜司に言った。「あなたの社長を早く病院に連れ戻して治療してあげなさい。彼が上半身不随になったら、松本家を守るという願いも叶わなくなりますよ」

時雄は極めて惨めな姿で運び出された。

車に乗り込んだ瞬間、燃が男性用のコートを羽織り、背の高い凛とした姿の男性に肩を抱かれながら警察署の玄関を出て行くのが見えた。男性は白いシャツに青と白のチェック柄のベストを着ていた。

「淮陽が保釈に来たのに、お前は言うことを聞かず、中で静かに過ごすなんて言い張って。これで苦い思いをしただろう」高橋俊年は燃を抱きながら、心配と叱責が混じった声で言った。

怪我はしたものの、松本晴子を自ら殺害したという疑いを避けられたことで、保釈を拒んだ決断は正しかったと燃は思った。

結局、自殺に追い込んだのと、直接殺したのとでは大きな違いがある。

「ごめんなさい、俊年兄さん。心配をかけて。夜中なのに、起きて迎えに来てもらって申し訳ない」

燃は時雄に殴られた体中の骨が外れたように痛み、仕方なく俊年の腰に手を回して前に進んだ。

俊年は最初、彼女を抱えて出ようとしたが、燃が自分の足で歩いて出ると頑なに主張したのだった。

「バカな子だな。何をしても俺はお前を支持すると言っただろう。心配するのは当然だし、家に連れて帰るのも当然のことだ。俺に謝らなくていい」

「うん、わかった。俊年兄さん、私、疲れた」

「疲れたなら家に帰って、ゆっくり眠りなさい。何も考えなくていい。何が起きても、俺がお前を守る。誰もお前を傷つけさせない」

俊年が紳士的にドアを開け、燃を座らせ、二人で数十億円の高級車に乗って去っていくのを見て、時雄の瞳には激しい怒りの嵐が渦巻いた。

彼女が帝都で最も尊い千年の名門を仕切る高橋俊年とあんなに親しいなんて。