第156章 永遠に思い出したくない痛み

「松本夕子?そんなことがあり得るの?彼女はあんなに弱々しい女性なのに、どうしてこんな連続殺人を犯せるの?それに昨夜の春節特番での彼女の演技は素晴らしく、観客を魅了して一躍有名になったのに、どうしてこんな恐ろしいことをするの?」山本煜司は信じられないという様子で尋ねた。

彼は松本夕子に対して良い印象を持っていた。

温井時雄の手が重度の火傷で入院していた日々、松本夕子は毎日病院に来て時雄の手に薬を塗っていた。

優しい振る舞いで、礼儀正しく、人に心地よさを感じさせる人だった。

温井時雄は無傷で、まるで重度の火傷を負ったことがないかのような自分の手を見つめ、何かの記憶に浸っているような目をしていた。

「腕時計の録音は取り出せたか?」

温井時雄が橋本燃に渡した腕時計には、位置情報システムの他に録音機能もあった。

録音は3日間だけで、3日経つと自動的に消去される。

「もう取り出しました!」山本煜司は録音の入ったタブレットを温井時雄の前に差し出した。

温井時雄は録音ファイルを見て、表情が一瞬躊躇したように見えた。何かを恐れているようだったが、最後には長い指を伸ばして録音を再生した。

録音が終わると、温井時雄と山本煜司の顔には異なる表情が浮かんでいた。

温井時雄の目は複雑な色を帯び、山本煜司は驚きに満ちた目をしていた。

温井時雄はまさに自分が予測していたが深く考えたくなかった事実を聞くことを恐れていた。そして結局、彼はそれを聞いてしまった。

さらに、長年彼が疑問に思うことのなかった秘密も聞いてしまった。

いわゆる追跡、いわゆる命の恩人、それらはすべて異能力によるものだった。

彼を導いて松本晴子の個室に入らせたのは異能力だった。

だから重傷を負っていた時、彼の脑は何かに導かれるように、笑い声に満ちたその個室のドアを開けさせたのだ。

実は橋本燃が病院で松本晴子の足は痛くないと言い、彼女が彼の前で演技をしていただけで、あんなに痛そうに泣いていたのは嘘だと言った時、温井時雄は松本晴子が彼の前で見せていたほど善良で無実ではないことを知っていた。

その後、松本晴子は次々と橋本燃と対立し、彼はその時松本晴子の味方をしていたが、橋本燃が間違っていないことも知っていた。