温井時雄は高熱で意識を失った。
昨夜、彼は橋本燃の様子がおかしいことに気づき、すぐに藤堂健太を呼んで診察してもらった。
藤堂は診察後、なすすべがなかった。
橋本に鎮静剤と強心剤を投与することしかできなかった。
死の淵にいる燃の姿を見て、時雄は初めて絶望的な恐怖を感じた。
彼がどれだけ口先だけで燃の死を望むと言っていても、彼女が本当に危険な状態になった時、彼は彼女がわずかな傷を負うのも見ていられないことに気づいた。
彼女が自分から離れていくと感じた時、彼の心は猛毒を塗った鋭い短剣でねじ込まれるように痛み、息もできないほどだった。
燃の体温を下げるため、時雄は藁にもすがる思いで、再び彼女を氷で満たした浴槽に入れた。
筋肉が凍傷で壊死するのを防ぐため、時雄は何度も何度も燃の全身の肌をマッサージした。
そうして彼は氷水の中で彼女に付き添い、三時間もマッサージを続けた結果、燃の体内の熱は徐々に散り、充血して赤くなっていた顔色もやや正常に戻った。
藤堂が燃を診察し、生命の危険がないことを確認した後、時雄の行動に驚いた。
彼が死は避けられないと思っていた燃が、時雄の懸命な努力によって、体内の乱れた恐ろしい脈拍が正常に戻ったのだ。
藤堂の言葉を聞いた後、時雄の体はもう支えきれず、気を失った。
漢方薬を服用していない時雄にとって、氷点下の水に三時間も浸かっていたことは、彼の体が丈夫でなければ、とっくに凍死していただろう。
時雄が目を覚ました時、呼吸が困難で、喉は火のように乾いて痛み、言葉にできないほどだった。
「温井社長、心配しました。やっと目を覚ましましたね。今どんな感じですか?」山本煜司は一日昏睡していた時雄を心配そうに見つめた。
「水……」時雄は喉の言葉にできないほどの痛みに耐えながら、苦しそうに一言だけ発した。
煜司はすぐにベッドサイドのガラスのコップを取り、時雄に渡した。時雄は一杯の水を飲み干し、喉の調子が少し良くなったように感じた。
「そんなに心配した顔をするな、俺は大丈夫だろう!」時雄はそう言いながらコップを煜司に返した。
「何が大丈夫ですか。あなたは体が冷えすぎて昏睡状態になり、救命処置中に一度心停止までしたんですよ。藤堂医師は除細動器を持つ手が震えるほど驚いていました。」