第158章 甘い恋愛をしよう

温井時雄との一夜の狂乱の後、橋本燃は自分の体の衰弱がますます明らかになっていると感じていた。

松本夕子の龍鳳蝗術の威力が強まったのか、それとも松本羽源に飲まされたあの薬、あるいは冷たい水に長時間浸かっていたせいなのか分からなかった。

燃はここ数日、制御できないほどの喀血に悩まされていた。

咳も出ないし、胸の圧迫感もなく、呼吸困難の感覚もないのに。

それでも時々、新鮮な血を吐き出してしまう。

専門医として、燃は自分の命が長くないことを知っていた。

命の残り時間のカウントダウンが始まったとき、あなたは何をしたいですか?

燃は24年の人生を振り返った。短いけれど、十分に充実していた。

医者として、彼女は命を救い、何度も死神の手から患者の命を奪い返し、母親の寿命を20年延ばした。

願望師として、他の人が叶えられない願いを実現し、夢を持つ人々の夢を叶えてあげた。

殺し屋として、彼女は自分を古代の義賊のように感じていた。金持ちから奪って貧しい人を助け、悪を懲らしめ善を広め、善良な市民を虐げる悪の勢力を排除し、国家が公に手を出せない闇の勢力と戦った。

短い24年の人生で、彼女は多くの意義深く価値のある良いことをしたと自負していた。

しかし、自分自身のために何かをしたことはなかった。

唯一わがままに温井時雄と結婚したが、それも失敗に終わり、3年間彼の不機嫌な顔を見続けることになった。

彼女はネットで一枚の画像を見つけた。そこには人生で必ずすべき100のことが列挙されていた。

彼女はその100のことを一つ一つ消していき、最もやりたいことだけを残した。それは——真剣に甘い恋愛をすることだった。

そして、旧正月の6日目、人々で賑わう繁華な天一広場で、こんな光景が見られた。

「すみません、彼女いますか?私とお付き合いしてくれませんか?」

黒いダウンジャケットを着て、髪を乱した燃が、25歳くらいの白いスポーツウェアを着た、陽気で活力に満ちた男性に声をかけた。

これは燃が厚かましくも声をかけた20人目の男性だった。

「頭がおかしいなら病院に行けよ。病院は正月でも開いてるからな!」男は嘲笑いながら言い、燃を避けて立ち去った。

5階のレストランの窓際の席に座っていた時雄は、また一人の男が嫌悪感を示しながら立ち去るのを見て、目がさらに冷たくなった。