橋本燃は二人の男に冷たく湿った、カビ臭い地下の密室へと連れて行かれ、鉄格子の部屋に強く押し込まれた。
橋本燃は素早く数歩前に踏み出したが、足元で何か柔らかいものを踏んだ後、体が干し草の上に倒れ込んだ。
薄暗い灯りの下、痩せこけた小さな体が地面で少しずつ動き始めるのが見えた。
「お嬢さん、何か悪いことをして、ここに閉じ込められたのかい?」非常に弱々しく老いた声が響いた。
そして、髪を振り乱し、顔が見えない人がゆっくりと頭を上げた。
橋本燃が何も言わないうちに、女性は感情的になって橋本燃に向かって這い寄ってきた。
「心耶、私の心耶、あなたは死んでいなかったの、まだ生きているの?」
しかし彼女の体は極度に衰弱しているようで、地面を何度か這っても前に進むことができなかった。
燃はすぐに彼女の前にしゃがみ込み、座るように助け起こした。
「私は心耶ではありません、橋本燃と言います!」燃は言いながら彼女の顔の前の髪をかき上げ、老いて皺だらけで汚れた顔を見た。
老婆は燃の若く活力に満ちた顔を見て、目の中の希望が少し薄れた。
「確かにあなたは心耶ではないわね。心耶がまだ生きていたとしても、六十歳になっているはず。あなたのように若いはずがない。でも、どうしてあなたは心耶にそっくりなの?」
「おばあさん、あなたは高橋瑤子のお母さんですか?」老婆はうなずいた。
高橋瑤子は今年六十歳、彼女の母親は少なくとも八十歳はあるだろう。
「あなたは雷田震に捕まってここにどれくらいいるの?」
「45年よ。彼は私たちが心耶を死なせたことを恨んでいて、心耶が死んで3年後に私たちに復讐しに来たの……」
老婆は燃の顔をじっと見つめ、突然何かを思い出したように感情的になって尋ねた。「あなたのお母さんは今年48歳?」
燃は胸が締め付けられる思いで、うなずいた。
「彼女の背中に梅の花のアザがあるでしょう?」
老婆の言葉を聞いて、燃の心臓はドキドキと激しく鼓動し始めた。
母親は生前、自分が捨て子だったと言っていた。養父母に15歳まで育てられ、二人が亡くなった後は自分で仕立て屋の見習いとして働き、自活していたと。
「そ、それじゃあ、あなたは私のおばあちゃん?私の背中にも梅の花のアザがあります!」