雷田震は七十歳を過ぎていたが、毎日欠かさず訓練を続け、数十年の武術の鍛錬により、その身のこなしは衰えていなかった。
特に命の危機に瀕した瞬間、彼の体から爆発するエネルギーは常人には想像もつかないものだった。
橋本燃は彼と数合交わしただけで武器を奪われ、頭に向かって打ち下ろされそうになった。燃は必死に震の手を掴んで反転させ、銃口が自分の頭に向かないようにしていた。
しかし震の力はあまりにも驚異的で、燃は全力を尽くしても、危険な銃口が少しずつ自分の頭に近づいていくのを止められなかった。
雷田壮一と戦っていた温井時雄は、目の端で燃が危険な状況にあるのを見て、強く壮一を蹴り飛ばし、震に向かって飛びかかった。
時雄が震の前まで走りきろうとした瞬間、武器を奪い返した壮一が時雄の背中に向けて発砲した。
燃が振り向くと、壮一の銃口が時雄に向けられ、引き金が引かれるところだった。
「危ない、伏せて!」燃は心臓が喉から飛び出しそうになりながら叫んだ。
時雄は身を躍らせて跳び上がったが、壮一の放った弾丸が彼の太ももに命中した。
同時に時雄は燃の上に乗っていた震を力強く地面に押し倒し、震の銃を握る手を掴んで地面で揉み合いになった。燃はその隙に震の体に取り付けられた爆発物を解除しようとした。
「私が甘かった。お前たち正義の軍は我々のように約束を守らないと知っていた。お前たちは裏切り者だ!」震は怒りに満ちた目で時雄を睨みつけた。
「王子は王子、私は私です。王子はあなたに手を出していない。私があなたに言ったのは一対十の勝負だけだ。加登王子が言ったような逃げる時間を与えるとは約束していない。だから裏切りなどない。十年前、あなたは私の戦友たちを死に追いやった。私とあなたの間には、あなたが死ぬか私が死ぬかしかない。私の目の前であなたを逃がすことなどできない」時雄は震の銃を握る手をしっかりと掴み、冷たい眼差しで答えた。
一方、時雄に二発目を撃とうとしていた壮一は、雷田琰に蹴り倒された。
琰は小さな体で壮一に飛びかかり、発砲を阻止した。
「琰、お前は狼の心を持つ畜生だ。兄を殺し父を裏切るなど、天理が許さない。お前が完全な畜生だと分かっていれば、とっくに殺していた」壮一は殺気に満ちた目で琰を睨みつけた。