安城に戻って二日目、橋本燃は会社に出勤した。
以前はまだキャスティングが決まっていなかった『天命鳳后』は、星野輝と佐藤淘子の交渉の末、すでに撮影段階に入っていた。
飛炎年華所属の田中悠真が男主人公の井上夜琰を演じ、須藤南花が女二号の上條雪を演じることになった。
林田笑々は女主人公の山田無双を演じることに!
そう、笑々は死んでいなかった。
帰国初日、燃はエンタメニュースで笑々の記事を見て、すべてを理解した。
温井時雄が松本夕子に脚本の女一号の役を笑々に譲らせたのは、笑々を餌にして夕子に笑々に手を出させるためだった。
雷田獅との戦いが突然あれほど早く始まったのも、時雄が裏で糸を引いていたからだろう。
時雄は夕子の異能力が雷田震の勢力と関係していると疑い、わざと芝居を打って夕子に見せたのだ。
さすがに時雄の計算は正確だった。
夕子は本当に雷田の人間で、自信過剰になり、自分は彼らのことを十分理解していると思い込み、彼女と時雄を雷田勢力の中核へと導いた。
しかし、彼女は「一山高ければ一山あり」ということを知らなかった。彼らの山の上で信号を遮断する力がどれほど強くても、彼らには情報を外部に伝える方法があった。
夕子の自信と野心が、彼らに雷田内部の核心に入る鍵を与え、今回の雷田獅との戦いをより円滑に完了させることができた。
笑々はこの大芝居に協力し、その後、時雄も当然彼女を冷遇することはなかった。
わずか十数日の間に、笑々はいくつかの国際的な高級ブランドの代表契約を獲得し、人気バラエティ番組やブランドイベントに引っ張りだこだった。
帰国してからの数日間、時雄も暇ではなかった。穴が開いた負傷した足を引きずりながら笑々のイベントに出席し、テープカットを手伝い、多くの女性たちの羨望の的となっていた。
燃は時雄が負傷して帰国し、笑々のためにイベントに出席するというニュースを見たとき、心は穏やかだった。
夕子が松本晴子を殺したと認めた日から、彼女と時雄の間には恩讐情愛の絆はもはや存在しなかった。
彼らの間には誰も誰にも借りがなく、すべては清算され、それぞれが幸せになればいいのだ!
燃が監修する作品はすべて、初期段階で彼女自身が現場に足を運び撮影を見学し、不足点をすぐにフィードバックできるようにしていた。
今日は『天命鳳后』の撮影初日だった。