最初に反対したのは温井詩葉だった。
温井時潤が五年間好きだった人が橋本燃だと聞いて、詩葉はもう怒り心頭だった。
この橋本燃、どうしてこんなにしつこいのか?
燃は彼女にとって一番の親友だった松本晴子を死なせた張本人で、詩葉は一生燃を許すつもりはなかった。
温井正良夫妻は驚きのあまり口をぽかんと開けて言葉が出なかった。黒い瞳が時雄と時潤の間を行ったり来たりしていた。
彼らは本当に燃のことが好きで、燃に一生温井家に残ってほしいと思っていたが、長男の嫁が次男の嫁になるなんて、そんなことは考えたこともなかった!
「俺が誰を好きになるかは、おじいちゃん、おばあちゃん、父さん、母さんに言えばいいことで、お前には関係ない。どっか行け!」
時潤は威厳のある目で最初に立ち上がって反対した詩葉を見つめ、冷たい声で言った。「燃が兄さんと結婚していた三年間、お前が彼女に嫌がらせをして、彼女に多くの辛い思いをさせたことは知っている。
先に言っておくが、これから燃が俺と一緒になったら、もしお前が彼女に少しでも失礼なことをしたら、俺がどうやってお前を痛い目に遭わせるか見ていろ。」
この迫力、この口調、なんてかっこいいんだろう?
藤原月子は密かに次男に拍手喝采しながらも、長男の暗い目を見て、はっとわれに返った。
次男が五年間好きだった女性は、元長男の嫁だった。
この関係は、少し複雑すぎる。
「ごほんごほん……」月子は咳払いをした。「二人とも喧嘩はやめなさい。時潤、ちゃんと説明してくれる?どうして燃のことを五年も好きだったの?私たちと燃の縁は、どう考えても四年もないでしょう?」
時潤は黒いアルバムを取り出して月子の前に差し出した。
月子がアルバムを開くと、燃の清純で魅力的な写真が目に入った。異国情緒あふれる街角で、燃はシンプルな白いTシャツにデニムスカート、白いスニーカーを履き、ツインテールで、かがんで目の前の鳩の群れにエサをやっていた。
この写真は何枚もあり、彼女と鳩が舞い踊る写真、鳩が彼女の手のひらに止まり、彼女の甘い笑顔と鳩が優しく見つめ合う横顔など、とにかく非常に青春感あふれる、そして意味深い一連の写真だった。
写真の下には日付の透かしがあり、時間はちょうど五年前だった。
さらにめくると、燃が同じ服装で数人の大柄な黒人と戦っている写真があった。