第258章 真偽の橋本燃

「私はやってない、私には人を傷つける心なんてない、彼女が私にお酒をこぼしたのよ、どうしてそんな嘘をついて私を責めるの?」温井詩葉は悔しそうに大泣きした。

幼い頃から涙作戦に慣れている詩葉は、涙さえ見せれば、人の心を掴めないことはないと思っていた。

「はいはい、ごめんなさい、さっきは私が手を滑らせてグラスを倒してしまったの、謝るわ、もう悲しまないで、着替えに連れて行くわ、風邪をひかないように」橋本燃は笑顔で謝った。

「彼女に謝ることないよ、そもそもお前が悪くないんだから、彼女の悪い癖を甘やかすな、自分で着替えに行かせればいいんだ」温井時潤は不機嫌そうに言った。

時潤が燃に詩葉の着替えに付き添わせないのを見て、詩葉は強い口調で言った。「私は彼女に着替えに付き添ってほしいの、彼女は結婚式の主催者で、私はお客様よ、着替える場所も知らないし、彼女が案内してくれないなら、それはホスト役として配慮が足りないってこと、お客様の面倒も見られないなら、どうして私たち温井家に嫁ぐ資格があるの?」

時潤はすぐに詩葉を睨みつけて強く言った。「資格があるかどうかはお前が決めることじゃない。俺は好きな人と結婚する、余計なことを言うな、もう変なこと言ったら口を縫い合わせるぞ」

「もういいわ、時潤、今日は私の父の結婚式よ、式はもうすぐ始まるの、この時に問題を起こさないで、私が詩葉を着替えに連れて行くから、すぐに戻ってきて新郎新婦のレッドカーペットを見ましょう」燃はそう言うと詩葉の手を引いて歩き出した。

「燃姉さん、私も一緒に行くわ!」温井時花は心配そうに言った。

「大丈夫よ、会場を見ていてくれる?何か問題が起きないように、すぐに戻るから」

燃が詩葉を着替え室に連れて行く途中、詩葉は燃の計画を阻止する方法について話し続けていた。

「橋本燃、あなたが少し医術を知っていて、お金を稼げるからって、私があなたを見直すと思わないで。あなたは私の目には殺人犯よ、晴子さんを殺したのはあなた、私は必ずあなたの弱みを見つけて、晴子さんの仇を取ってやるわ」詩葉は憎々しげに言った。

燃は着替え室のドアを開け、乱暴に詩葉を中に押し込んだ。

「早く着替えなさい、あなたが弱みを見つけて、大好きな晴子さんの仇を取るのを待ってるわ」

詩葉が服を探している間、燃はソファに座って雑誌をめくっていた。