第270章 私の言うことを聞かない人は、神様に会いに行かせた

しかし彼女の手がまだ手の中の薬粉を弾き出す前に、男性にさらに素早く掴まれ、彼と壁の間に再び閉じ込められてしまった。

しかも今回は、彼の体が彼女にさらに密着し、このような親密な行為に橋本燃は恥ずかしさと怒りと憎しみを感じた。

「温井時雄、この疫病神みたいな男、早く離しなさいよ!」

「橋本さん、もう一度言いますが、私は田中黙です。ただ傷を見てもらいたいだけなのに、もしあなたがまた小細工を使うなら、容赦しませんよ!」

田中は燃の耳元で囁いた。磁性のある低い声と温かい息が燃の敏感な耳たぶに吹きかかり、彼女は体に言い表せない熱さを感じた。

この憎たらしい男は、彼女の一挙手一投足を理解しているくせに、自分が時雄だということを認めようとしない。

腹立たしいことに、二年間の鍛錬を経て、彼の身のこなしはさらに上達し、体から濃い殺気を放っている。彼女は全く彼の相手ではなかった。

燃は人に脅されることが嫌いだった。彼が温井時雄であろうと田中黙であろうと、彼女は頭を下げて従うつもりはなかった。

「私は技術で劣っていても、尊厳はあります。田中将軍のような他人を強制的に治療させるやり方は、私は大嫌いです。

今日あなたが私を殺したとしても、私はあなたを診察しません。」燃は冷たく言った。

「私の言うことを聞かない人間は、みんな神様に会わせてやったよ。だが女性に対しては、特別扱いしてる。

見苦しい女は部下に楽しませて、君のような美しい逸品は、私が直々に可愛がってから、神様に会わせてやる!」

黙の冷たく妖艶な声が燃の耳元で静かに響き、燃の全身に鳥肌が立った。

さらに燃を怒らせたのは、彼の数言で、彼女が思わず二人の間にあった二度の艶やかな夜を思い出してしまったことだった。

そのシーンを思い出すと、骨までもが酸っぱく柔らかくなるような気がした。

燃の体が一瞬柔らかくなったのを感じ、黙は燃が彼の言葉に怯えたのだと思い、目の奥に深い光が閃いた。

数秒後、彼は腕の中の女性の激しい抵抗を感じた。

「田中将軍、私は白米と小麦粉で育ったのであって、脅しで育ったのではありません。田中将軍に勇気があるなら、私を神様に会わせてみなさいよ!」