第295章 犯人を捕まえる

医者に変装した高橋若渓は、エレベーターで高橋博樹の入院フロアに到着した。

当直の看護師は彼女を見て、少し驚いた様子で言った。「馬田医師、こんな遅くにどうしたんですか?もう退勤されたんじゃ?」

若渓は看護師が彼女を馬田医師と間違えたことに気づかなかったことに、内心とても喜んだ。

小林玲子は言っていた。彼女が高橋博樹を殺して目覚めさせなければ、警察は高橋博樹が事故死したと断定するしかなく、彼女は刑務所に入らなくて済むだろうと。

「突然、高橋老を早く目覚めさせる良い方法を思いついたので、すぐに来て試してみようと思いました」声変換器を付けた若渓は、穏やかな声で答えた。

「馬田医師はこんな遅くても患者さんのことを考えているなんて、本当に責任感のある素晴らしい医師ですね。多くの患者さんに慕われるのも納得です」

「そんなことないですよ、私は自分の仕事をしているだけです。では病室に行って高橋老を診てきます」

「はい、馬田医師!」

若渓は無事に集中治療室に入り、酸素マスクを付け、蝋のように黄色い顔色で、全身から死の気配を漂わせている高橋博樹を見ると、心臓の鼓動が抑えきれないほど速くなった。

「大伯父さま、どうか恨まないでください。私はあなたに死んでほしくなかったのです。大伯母が許さなかったのです。あなたが天国から見ているなら、復讐するなら善良なふりをして実は悪魔のような偽りの嫁に向けてください。

彼女は私を言いなりにするために、祖父を、あなたが最も愛していた弟を殺したのです。さらに私があなたを殺さなければ、家族全員を殺すと言いました。

家族の命を守るために、私はあなたに申し訳ないことをするしかありません。どうか恨みは頭に、借りは主に、復讐するなら小林玲子に向けてください、私ではなく!」若渓はそう言いながら、用意していた注射器を取り出し、点滴液に注入しようとした。

これは高橋博樹の薬と相克する薬液で、体内に入ると急速に吸収され、高橋博樹がどのように死んだのか誰も調べることができないだろう。

「ピピピピ……」若渓が点滴チューブに触れた瞬間、部屋に耳障りな警報音が鳴り響いた。

若渓の顔は一瞬にして青ざめた。

しかし彼女は警報音を無視し、注射器を持って点滴チューブに刺そうとした。

高橋博樹さえ死ねば、彼女は安全だった。