第339章 雷田琰が跪いて頼む

藤原錦一は雷田琰の身にまとう地獄の魔王のような不気味なオーラを見て、急いで山本煜司に目配せした。

しかし山本煜司は全く錦一を見ようともしなかった。煜司の心の中では、女性よりも繊細な顔立ちをした小柄な男、雷田琰をまったく眼中に入れていなかったのだ。

「お前の家は海じゃなくて毒の巣窟だって言ってるんだよ。余計な……」

その時、琰が電光石火のごとく素早く煜司の顎に一撃を加え、彼の言葉を喉元で止めた。

防御の準備をしていた煜司だったが、それでも琰の一撃を受けてしまい、すぐさま反撃に出た。しかし狭い車内では、二つの技を繰り出す前に琰に手足をがっちりと固められ、極めて屈辱的な姿勢で車のフロアマットに押さえつけられてしまった。

「善は小さくとも行い、悪は小さくとも行わず。同様に、自分より弱そうに見える相手を軽視するな。俺がどれだけ背が低くても、お前のような犬に軽蔑される筋合いはない。

お前の主人でさえ俺に手を出す勇気がないのに、お前がここで威張り散らすな!」琰は冷ややかな表情で煜司を押さえつけながら言った。一見力を入れていないようでいて、煜司は全く立ち上がることができなかった。

幼い頃の煜司は貧しい家庭に生まれ、生活の苦しさを味わってきた。

しかし大学に入って田中黙の援助を受けてからは、彼の人生は順風満帆になった。

これまでこのような屈辱を受けたことのない煜司は、黙と錦一の目の前で、顔を車のフロアマットに擦りつけられ、恥ずかしさと屈辱で穴があったら入りたい気持ちだった。

しかし全身の力を振り絞っても、琰の拘束から逃れることはできなかった。

彼はようやく琰のあの小さな体に、どれほど恐ろしいエネルギーが隠されているかを知った。

錦一は煜司が一分も経たないうちに敗北する様子を見て、目を見開いて驚き、自分が早く言い直して良かったと心の中で安堵した。さもなければ、顔をマットに擦りつけられていたのは自分だったかもしれない。

「琰、顔を立ててやれ、手を放せ!」高速で運転中の黙は、琰の身にまとう冷たいオーラを見て、不機嫌な声で言った。

実は彼らは普段、琰の兄妹を「大毒っ子」「小毒っ子」と呼ぶのに慣れていた。しかし内輪で呼ぶのはともかく、本人の前でそう呼ぶのは相手に対する不敬だ。

琰が煜司を懲らしめたのは、非難されるべきことではない!