「彼は大丈夫よ、気絶しただけ」橋本燃の声は冷たく、温もりのかけらもなかった。
兄弟二人はその言葉を聞いて、すぐに安心した。
同時に燃の冷たい声から、彼女が怒っていること、心が冷えていることを感じ取った。
そうだろう、彼らの立場だったとしても、叔父の家族のために尽くしたのに、感謝されないどころか、実の叔父に暗殺されかけたのだから。
彼らだって怒り、心が冷え、苦しむだろう。
「燃、これには誤解があるんだ。家に入って説明させてくれないか」高橋修哲は申し訳なさそうに燃を見つめた。
「説明なんて必要ない。どんな誤解があろうと、叔父が実の姪に向かって武器を向けた瞬間、もはや誤解の余地はなくなった。もう橋本燃の叔父を名乗る資格もない」雷田琰は冷たい声で叱責した。
修哲は雷田を知らなかったが、彼の言葉に反論できなかった。
住職の話を聞いて、燃が高橋家の悲劇を引き起こしたことに怒りを感じていたが、燃を消そうとは思ったことはなかった。
いつも冷静な父親でさえ、常に燃を大切にするよう教育していた。
なぜ自分はそんなに頑固になってしまったのだろう?
「燃、ごめん、全て私の責任だ。私の言葉が彼を誤解させてしまった!」修哲は燃の目を見つめ、心から謝罪した。
実の叔父に射殺されそうになったことで、燃の心は本当に冷え切り、痛みを感じていた。
しかし高橋家でこの数日間に起きた一連の出来事を考えると、燃にも理解できたし、修哲に説明の機会を与えようと思った。
「中に入って話しましょう」燃は言いながら星河を見た。「星河従兄、きれいな服を買ってきて。彼の服はガソリンだらけで、火がつきやすいわ」
実は家には田中黙の服があったが、彼女はそれを貸したくなかった。
彼女を殺そうとした叔父に、愛する人の服を着せる理由があるだろうか?
「わかった、すぐ買ってくる」星河はそう言うと足早に立ち去った。
リビングに入ると、修哲は申し訳なさそうに事の経緯を説明した。
「燃、本当にごめん。全て私の過ちだ。住職の言葉を父に伝えるべきではなかった。今日起きたことを見て、父が思い詰めて頑固になってしまったんだ」