第363章 橋本燃の私心

彼は殺意を抱いたにもかかわらず、橋本燃に許されただけでなく、仕事に励むよう諭されたのだ。

高橋啓川は63年生きてきたが、この小娘ほど物事を見通し、度量が大きく、先を見据える人間に出会ったことがないと感じた。

「燃、すまない、申し訳ない!」

謝罪の言葉以外に、高橋啓川は自分の後悔をどう表現すればいいのか分からなかった。

「おじさん、自分にガソリンをかけたのは、私が生きていようと死んでいようと、自分の命も絶つつもりだったの?」燃は静かに尋ねた。

啓川は恥じ入るように頭を下げ、後悔に満ちた声で言った。「おじさんとして、自分の姪を撃とうとした。成功しようと失敗しようと、私には生きる資格がない。もし君が死んだら、私も命で償う。失敗したら、自分の顔を焼いて醜くし、君が私の顔を見てさらに心を痛めることがないようにしようと思った。」

「お父さん、本当に分別がなくなったね。いつも僕たちに慎重に行動し、何事も三度考えてから行動するよう言い聞かせていたのに、自分のこととなるとこんなに衝動的になるなんて」高橋修哲は悲しげに責めた。

「おじさん、過去のことは水に流しましょう。今私たちがすべきことは、力を合わせて高橋家に危害を加えようとしている真犯人を見つけ出すことです。三人のいとこのためにも、どうか体を大事にしてください。

おばさんに出所を待つと約束したでしょう?それに夢耶も、あと数年で出てくる。もし彼女の気性がまだ治まっていなければ、あなたの指導が必要です。

家には多くの問題があり、あなたの采配が必要です。くれぐれも挫折しないでください。そうすれば敵の策略にはまり、敵に漁夫の利を得させることになります。

高橋家の今日の栄光は、祖父が一手に築き上げたもの。私は祖父の労苦の結晶を守り、世間が高橋家をすぐに忘れないようにしたい。おじさんも私と一緒に高橋家を守りませんか?」

燃は心から高橋家が没落することを望んでいなかった。

なぜなら、この栄光は本当に祖父が若い頃に命を懸けて得たものだからだ。

しかし彼女は結局高橋姓ではない。どれだけ努力しても、高橋家の人間がいなければ、高橋家は繁栄できない。

そして彼女にも私心があった。これらの試練を経て、真実を見極めたおじさん一家は、きっと奮起するだろう。