夏目孝程は言った。「それは3年前に…」
夏目孝程の言葉がまだ終わらないうちに、後藤澄玲のバッグの中の携帯電話が鳴った。クライアントからの電話だった。
後藤澄玲は電話に出た。「もしもし、長谷社長。」
後藤澄玲が電話に出ると、クライアントはすぐに愚痴をこぼし始め、それからもう延々と続いた。
夏目孝程が後藤澄玲に伝えようとしていた話は、強制的に遮られてしまった。
ただ、先ほど後藤澄玲が「あなたの上司」と何度も言っていたことを思い出し、夏目孝程は彼女とBOSSの間の距離がさらに遠くなったことを明らかに感じた。
彼女はもうBOSSの名前すら呼ばなくなっていた。
ああ!
10分ほど後、車は法律事務所のビルの前に停まり、後藤澄玲は電話をしながら夏目孝程にお礼を言い、そのまま電話を続けながら建物に入っていった。