「誰?」後藤澄玲は入り口の方を見て尋ねた。
ドンドンドン!入り口の外で、相手は返事をするどころか、先ほどよりも激しくドアを叩き始めた。
後藤澄玲は眉をひそめた。夜遅くに何をしているんだ?
このホテルは彼女が宿泊する前に調べたところ、安全上の問題は一度もなく、周辺でも事件は起きていなかった。
あらかじめ用意しておいた護身用スタンガンを手に取り、後藤澄玲は尋ねた。「女将さん?」
外で、男はその問いかけを聞いて、少しかすれた声で答えた。「後藤澄玲、開けろ」
……後藤澄玲。
この声は聞き覚えがある、どこかで聞いたことがある。
後藤澄玲は片手にスタンガンを持ち、もう片方の手をドアノブに置いたが、安全チェーンは外さなかった。
再び激しいノックの音が聞こえてきて、後藤澄玲はカチッとドアを開けた。