089 盛田清堂:あなたはこの字が江藤厚志のものだと言うのか?【2更】

すぐに文房四宝が運ばれてきて、高台の上、来賓席の前にテーブルが設置された。

小林玉子は少女を見て、不快そうに言った。「そこまで言うなら、チャンスをあげよう。上がって書いてみなさい」

修斗羽は一気に怒り出した。

「大丈夫」勝山子衿は彼女の肩に手を置き、動かないよう合図した。

そして自ら立ち上がり、壇上へと歩み寄った。

この光景を見て、会場の学生たちは騒がしくなった。

次々と立ち上がり、舞台に上がって見たいという衝動に駆られ、興奮していた。額には「事件発生」の三文字が書かれているかのようだった。

江口燃は体内の乱れかけた內勁を落ち着かせ、イライラを抑えながら言った。「あの手で人を殴るのがあんなに痛いのに、どんな字が書けるんだ?」

字を書く手は、大切に保護するものじゃないのか?

「俺も見たことないけど、勝山パパは何でもできるよ」

「……」

江口は反論できないと感じた。

なぜなら彼はこの一時期ずっと自閉状態だったからだ。

彼は我慢強く、舞台の方を見つめた。

一方、鈴木知晩は眉をひそめ、困惑していた。

彼女には全く理解できなかった。カンニングを認めた状況で、子衿がまだ上がる勇気があるなんて。

彼女は小林と同じ師匠に学んでいたので、小林の気質をよく知っていた。

小林は普段は温和だが、学術的な問題に直面すると非常に厳しく、彼女自身も何度か叱られたことがあった。

子衿は今回、小林と真っ向から対立してしまった。これからは芸術界に足を踏み入れることはできないだろう。

名家は芸術界と繋がりがある。こんなことが起きた後、鈴木のご老人はまだ芸術界を敵に回した養女を可愛がるだろうか?

子衿は硯を一瞥し、墨がすでに磨られていることに気づいた。手間が省けた。

彼女は顎を上げ、巻物を指差した。「この字はいくらの価値がある?」

小林は怒りを抑えながら答えた。「少なくとも五百萬だ。さあ、書きなさい」

子衿は頷いた。「うん、覚えておいてね」

彼女は頭を下げ、筆立てから狼毫の筆を一本選んだ。

ライブ配信を見ている視聴者たちは混乱していた。

【彼女は何を言ってるの?小林に何を覚えておいてほしいの?】

【わからないけど、彼女は本当に勇敢だね。この勇気だけでも拍手に値する】