松本沈舟は自分のやり方に何も問題があるとは思わなかった。
そもそも、今回の舞踏会に参加する前提は名門の出身であることだった。
舞踏会の前に、名簿に載っている大小の名門について、松本夫人も家族の方から特別に一部を彼に渡していた。
勝山家も含まれていた。
しかし勝山家からは、鈴木曼華、勝山月咲、勝山天律の三人だけが招待されていた。
勝山震霆は東京にいないし、戻ってくることもできないので、名簿を作る時点で彼は含まれていなかった。
勝山家の人選は、当然、曼華が報告したものだった。
当時、沈舟はまだ不思議に思っていた。子衿が鈴木家でそれほど可愛がられているなら、曼華がどうして彼女だけを漏らすことがあるだろうか?
そして彼は曼華の口から、勝山家がすでに子衿を追放したことを知った。
元々養女の身分しかなく、勝山家を離れたら、それは本当に東京の上流社会とは縁がなくなったということだ。
さらに言えば、クイーンホテルの入り口にはすでに横断幕が掲げられており、子衿が今夜ここが貸し切りになっていることを見逃すはずがないはずだ。
もちろん、これが東京の名門が自ら主催する舞踏会なら、誰が入ってきても彼の知ったことではない。
しかし帝都に関わることなら、絶対に混乱させるわけにはいかない。
従業員は沈舟が指し示す方向を見た後、一瞬戸惑い、少し不確かな様子で「あの女性ですか?」と尋ねた。
「そうだ」沈舟は頷いた。「彼女が入ってこなければ、気にしなくていい」
従業員が了承したところで、少女がすでに大広間の前まで歩いてきているのが見えた。
ガラスドアは自動で、人を感知すると自動的に開く。
従業員は沈舟の注意を思い出し、急いで前に出て、入り口を塞いだ。「お嬢さん、ここでは舞踏会が開かれています。重要な方々ばかりですので、入ることはできません」
子衿の足が一瞬止まり、彼女はまず従業員を見た。
その後、視線は前方5、6メートル先の沈舟に落ちた。
ほんの一瞬、1秒にも満たない間だけ、そして視線を戻した。
しかし沈舟は少女が彼を見たその非常に軽く淡い一瞥に敏感に気づいた。
まるですべてを知っているかのようだった。
沈舟は眉をひそめ、思い切って外に出た。