飛鳥夢子はさらに緊張した。
この問題はとても難しく、彼女も問題を読み終えたばかりで、頭の中でようやく解法の糸口が見えてきたところだった。まだ完全に整理できていない。
勝山子衿がこのように呼ばれて前に出て、本当に解けるのだろうか?
本谷先生はマーカーペンを渡しながら言った。「答えをそのまま書かないで、書きながら説明してくださいね。」
ライブ配信が始まると、コメント欄にもポツポツとコメントが増えてきた。
【これがあの芸術系の生徒?】
【この美貌、すごすぎる。芸能界入りできるレベルだよ。あのトップアイドルたちも顔負けだわ。】
【やっとこの芸術系の生徒を見られた。彼女が本当にできるのか、なぜISCの国際大会の出場権を得られたのか見てみたい。】
修斗彩は髪をかき上げながら、黒板に目を向けた。
彼女から見れば、勝山子衿は良くても自分と同じレベル、もしかしたらそれ以下かもしれない。
彼女も子衿がこの問題を解けるかどうか見てみたかった。
修斗彩の隣で、ある生徒がふんと笑った。「夢子と深山越の助けがなければ、この問題なんて解けるわけないだろ?」
もしこの問題が解けなければ、国際決勝に出場する資格なんてないはずだ。
「この問題はとても簡単です」子衿はマーカーペンを持ち、落ち着いた声で言った。「まずここに補助線を引いて、それからこの公式を使って…」
彼女は説明しながら書いていった。
特に急ぐわけでもなく、思考の流れも明確だった。
徐々に、他の生徒たちの表情も真剣になっていった。
夢子も口を開けたままだった。
子衿の解法は彼女のものとまったく異なり、少なくとも6つのステップを省略していた。
競技では時間が重要で、ステップを省略できれば、より多くの問題に取り組むことができる。
本谷先生はその解答過程を見ながら、顔が平手打ちを食らったかのように赤くなった。
この問題は彼女が帝都大学から持ってきたもので、もちろん自分でも解いたが、このような解き方があるとは全く思いつかなかった。
高校生の知識が自分より優れているなんて?
そんな中、子衿は最後の数字を書き終えた。「説明は以上です」
本谷先生は表情を硬直させ、なぜか狼狽えた様子で、少女の目を直視できなかった。「正、正解です」
子衿は手を拭いて、自分の席に戻った。