276 伊藤雲深:今日から、帝都に五条輝はいない【1更】

卦算の才能がなければ、五条家の祖宅に入ることすらできない。

そして才能があるということは、ただの普通の人間ではないという証明だ。

五条輝はもちろんこのことを理解していた。そうでなければ、彼はわざわざここまで足を運ぶこともなかっただろう。

彼は勝山子衿が誰なのか、名前が何なのかさえ知ろうとしなかった。

彼が知っているのは、子衿が確かに卦算の才能を持っており、災いを防ぐことができるということだけで、それで十分だった。

五条月子の表情が再び変わった。「何を言っているの?災いを防ぐ?」

「月子、家長があなたを外に出して修行させる理由がわかるよ」五条輝は手を背中で組み、首を振った。「あなたはいくつだ?今年も17歳だろう?まだ五弊三欠の道理を知らないのか?」

占術の道においては、誰であれ、五弊三欠のうちの一つを持つことになる。

五弊とは、「鰥」「寡」「孤」「独」「残」である。

三欠とは、「財を欠く」「権を欠く」「命を欠く」である。

古O州時代の魔女術士たちの多くが貧困に苦しんだり、体に障害を持っていたのも、この理由からだった。

月子がこれを知らないはずはなかった。

天機は覗き見るべきではない。

覗き見れば、それに応じた罰を受けることになる。

聞いた感じでは神秘的だが、冥々の中で確かに存在するものだ。

彼女はまだ正式に占術の道に進んでいないため、まだ五弊三欠の話は関係なかった。

一般的に、五条家の嫡流メンバーは18歳の年に正式に道に入る。

道に入る時、五弊三欠の中から一つを選ばなければならない。

しかし彼女の祖父は常々、彼らの一族は元々短命だから、「命を欠く」を選んだら生きていけないと言っていた。

だから、他のものを選ぶしかなかった。

「黙子は今年18歳になる」五条輝は淡々と笑った。「彼女はもうすぐ道に入る。私は彼女が五弊三欠に縛られないよう、同じく卦算の才能を持つ者に災いを防いでもらいたい。わかるか?」

五条黙子は五条輝の実の娘であり、同時に五条家族の嫡流メンバーでもあった。

松本家や五条家族のような古代皇朝時代から続く家系は、家族のメンバーが非常に多い。

兄弟姉妹と言っても、互いに一度も会ったことがない者もいる。

月子は黙子のことを聞いたことはあったが、会ったことはなかった。