第22章 もう一度見たらキスするよ

佐藤若菜はパジャマを手に取り、手首にはめられた高価で斎藤家の家宝でもある翡翠の腕輪を見つめた。少し考えた後、慎重にそれを外し、斎藤遥に渡した。「腕輪はあなたが預かっておいて。うっかり壊してしまったら、離婚するときに弁償できないわ！」

「気に入ったなら付けていればいい。気に入らないなら捨てろ」遥は冷たく言い、本を床に投げ捨て、ピピッと鳴っている携帯電話を取り上げて届いたメッセージを確認すると、立ち上がって服を着替え、一言も告げずに出て行った！

「意味不明ね」若菜は彼の冷たい表情を見つめ、斎藤家の屋敷にいた時とはまるで別人のようだと思った。心の中で白目を向けながら、彼の豹変ぶりと演技力の高さに感心しつつも、腕輪を引き出しの宝石箱にしまい込んだ。

「遥、来てくれたのね！」佐藤詩織は半透明のネグリジェを着て、遥の腕に飛び込んだ。自分の一通のメッセージで、彼がこんなに早く駆けつけてくれるなんて。彼の心の中では、名ばかりの妻よりも自分の方が大切なのだと実感した。

この認識は詩織の気分を大いに良くし、彼が結婚したという事実も、この二日間、別の女と同じベッドで過ごしたという光景も無視できるほどだった。

遥は彼女の笑顔を見て眉をひそめた。「どこか具合が悪いの？佐藤医師に電話した？」実は遥が急いで駆けつけたのは、詩織から「胸が痛い」というメッセージを受け取ったからだった。

詩織は先天性の心臓病を持っていた。ここ数年、遥の看病のおかげで発作の頻度はかなり減っていたが、胸の痛みを訴えられると、遥は心配して急いで駆けつけるのだった。

「さっきはちょっと痛かったけど、今はもう大丈夫よ」詩織は少し心虚そうに言った。

遥の心の中で、彼女は純粋で素直な存在だった。そして遥が一番心配していたのは彼女の心臓の問題だ。もし彼女がこんな理由で嘘をついて呼び出したと知ったら、彼の中での彼女の印象は間違いなく下がるだろう。

今、彼は結婚してしまった。あの女は正当に彼を所有できる。彼に嫌われるような失敗は絶対に避けなければならない。