第52章 新婚

ここに来てからずっと黙り込み、広がる原野をぼんやりと見つめていた斎藤遥は、ようやく佐藤若菜の緊張に気づいた——引き締まった美しい顔、きょろきょろと落ち着きなく動く瞳、警戒心から硬直した体!

「何を考えているんだ!」遥は遠くから視線を戻し、彼女の華やかな姿を見た。折れた茎や狗尾草が生い茂り、月光が絹のように降り注ぐ荒野に立つ彼女は、まるで月下の女神のようで、全身から不思議な美しさを放っていた。華やかさと荒涼さが奇妙に調和していた。

ただ、彼女の緊張と警戒心に満ちた表情は、自然な美しさを少し損なっていて、見る者を納得させなかった。

「ここは子供の頃によく遊びに来た場所なんだ!ここで絵を描くと、特にインスピレーションが湧きやすかった!」遥は静かに言った。その口調はごく普通だったが、小さな男の子が友達もなく、一人でこんな場所にいて、静かな星と月、そよぐ草だけを伴侶としていた姿は想像し難かった。

それは、どんな孤独だったのだろう?金の匙をくわえて生まれた彼が、なぜこんなに孤独で寂しい幼少期を過ごしたのだろう?

若菜は徐々に緊張を解いていった。殺人や強盗の妄想が少しずつ消え去り、代わりにこの男への同情——母性に似た感情が湧き上がってきた。

彼女はゆっくりと手を伸ばし、彼の手をしっかりと握り、彼を導くように月光が降り注ぐ方向へ向かい、大きな岩の傍らに座った。そして頭を彼の肩にそっと預けた。寄りかかることで力が湧くと聞いたことがある。

彼に寄り添って少し座っていよう。そうすれば、彼が口にしない寂しさを少しでも和らげられるかもしれない。

彼女は、ここに彼の美しくない幼少期の記憶があること、しかしそれが彼の人格形成に最も重要な記憶であることを知っていた。

彼女には分からなかった。なぜ佐藤詩織の自殺を聞いて、すぐに駆けつけるのではなく、彼女を心の奥底の秘密の場所に連れてきたのか。しかし彼女は尋ねなかった。おそらく、華やかさと孤独の間で、彼は人生のバランスを見つけようとしているのだろう。それならば、静かに彼に寄り添っていればいい。