第62章 逃げられるのか(3)

そして彼女の目に時折見える悲しみは、人の心を痛めるものだった。

あなたからはあまり表情を見せてもらえなかった、あなたの説明では無関心だからだと。

恋愛は本当に公平であるべきではないのか、情が深い方が傷つくのか。

あなたの過去はどんな傷だったのか、なぜ今でも忘れられないのか。

私はあなたの欠けたものを埋められないのか、あなたは心を変えてくれないのか。

斎藤遥はラジオのスイッチを切り、静かに言った。「佐藤宇太の歌が好きなの？」

歌の悲しい思いに浸っていた佐藤若菜は我に返り、隠すように言った。「宇太さんの歌はとても素敵で…」

「僕は楽観的な人間なんだ！」遥は唐突に言った。若菜はその意味を理解したようだったが、深く考えたくなかったのか、黙り込んだ。

遥は彼女の目をじっと見つめ、低い声で言った。「若菜、誰も恋愛の形を設計することはできない。それは決して思い通りにはならないから。君に会う前、僕は佐藤詩織を愛していると思っていた。でも君に会って初めて分かったんだ、本当の恋愛とは何かを。それは時間とも背景とも関係ない！恋愛とは、ただ愛する人といつも一緒にいたいということ。離れると恋しくなる。一緒にいるとより深く相手を求めたくなる、そういうものだ！」

「詩織に対しては、兄が妹を大切にする気持ちや、男が女に頼られる虚栄心があった。後になって分かったけど、それは愛ではなかった！僕は君を愛してしまったんだと思う。君がいつも可愛くないにもかかわらずね！」遥は彼女を見つめ、長い間悩んだ末に整理できた自分の気持ちを正直に語った。彼の瞳は澄んでいて真剣だった。

このような遥の姿に、若菜は考える間もなく拒絶の言葉を口にした。「あなたと詩織さんのことなんて、知りたくないわ。」なぜか、そう言った後で若菜は心がざわついた。でもそうすることでしか、自分の心を守れない、再び傷つかないようにできないと思った！

彼の前では、いつもの平静さ以外の感情が生まれ始め、もはや普段の冷静さを保てなくなっていた。彼に対する態度も、最初の確信が揺らいでいた——これらすべてが、彼女を落ち着かなくさせていた！