第112章 願いを借りる(6)

そうだね、どんなに美しい流れ星でも彼女の笑顔には敵わない。それなら何に未練があるというのだろう!

斎藤遥は佐藤若菜を抱き上げ、車に乗せた後、食器や食べ物の入った箱を片付け、夜明けの光の中、ゆっくりと車を走らせて帰路についた。彼の顔には少しの疲れも見えなかった。

「遥!」朝起きると、習慣的に手を伸ばして隣を探ったが、そこはもう空っぽで冷たくなっていた。隣にいた人がすでに起きてからかなり時間が経っていることがわかる。

「起きた?朝ごはん食べられるよ!今日の朝食は僕が作ったんだ、早く味わってみて!」男は宝物を見せるように若菜がよく着る花柄のエプロンを身につけ、まるで専業主夫のような姿で、お皿を持って寝室に駆け込んできた。

「何なの?あなたが作ったものって食べられるの?」若菜は布団から這い出し、ベッドの上に立ち、高い位置から遥の手にあるお皿を見下ろした。そこにはマカロニの炒め物があり、その上には焦げ目のついた目玉焼きが乗っていた。見た目は、実に食欲をそそるものだった!

「ほら、口を開けて、一口食べてみて!」遥はスプーンですくい上げ、彼女の口元へと運んだ。

「ちょっとちょっと、まだ歯も磨いてないのに!早く出て行って、寝室を油の匂いでいっぱいにしないで、すぐに出るから!」若菜は急いで彼の手を押しのけ、ベッドから飛び降り、彼を部屋から押し出した。

「わかったよ、早くね!」遥はそのスプーンのマカロニを自分の口に運び、じっくりと味わってみた。「うん、悪くないな!」

そう言いながら、マカロニの余韻が残る唇を舌でなめた。その様子は、かなり自己満足げだった!

「遥、これは世界大戦だったの?」若菜が顔を洗い終えてキッチンに来ると、ゴミ箱には3、4個の焦げた卵と、油のように黒くなったマカロニが2山ほど捨てられているのが見えた。「これはどれだけ食べ物を無駄にしたの!」

若菜は頭を振りながら、遥が彼女のために用意した皿を手に取り、一口食べた。そして顔を上げると、期待に満ちた遥の顔を見て、思わず親指を立てた。「ねえ遥、あなた料理の才能あるじゃない。これだけ捨てたってことは初めて作ったんでしょ?この味なら十分水準に達してるわ。これからも頑張れば!」