第127章 夫婦の出撃(2)

「それなら、もう話すことはないわね」カチッという音と共に、電話は切れた。

佐藤若菜は録音を止め、呆然と電話を見つめた。兎も追い詰められれば人を噛むって言うけど、あんたが兎なの？あんたが私を追い詰めなければ、私の方こそ天に感謝してたわよ！

若菜はイライラして罵りたい気分だった！もう道理も何もあったものじゃない——泥棒が追いかけろと叫ぶようなもの！

「どうしたの？誰が奥さんを怒らせたんだ？旦那が解決してやるよ！」斎藤遥が入ってきた時、若菜が罵りたそうな表情をしているのを見た。

「ふざけないでよ！PRの会社との話は終わったの？」若菜はにやけている遥を睨みつけながら、電話の録音をコンピューターにコピーしてバックアップを取っていた。

「ああ、方向性とプロセスは基本的に決まったよ。PRの会社がテキストのプロセスを作成したら、君はそのプロセスに沿って彼らの進捗を監視して、段階ごとに検収すればいいんだ」遥は椅子を引いて若菜の向かいに座り、コンピューターを開いて初期の意向書を若菜のメールボックスに送った。全体的な枠組みに慣れてもらうためだ。

「さっき田中蕎子から電話があったわ」若菜は録音も遥に送った。自分のコンピューターに何か問題があっても、バックアップが使えるようにするためだ。

遥はイヤホンをつけて録音を素早く聞いた後、若菜に尋ねた。「どうするつもり？」

「警察に通報して、精神異常の検査を申請するわ」そう言って少し間を置いてから続けた。「両親は年だし、驚かせたくないの。この数日は実家に帰って住むつもりよ」

若菜が前半を言っている時、遥の表情はいつも通りだったが、最後の一言を聞いた途端、彼の顔は曇った。「若菜、わざと俺から逃げようとしてるんじゃないだろうな？これからは自制するから、それでいいだろ？」

「死ねばいいのに！」若菜はそれを聞いて顔を真っ赤にし、手元の本を掴んで遥の頭に投げつけた！

遥は慌てて本を受け止め、照れ笑いをしながら言った。「昨夜は俺を部屋に入れないって言ったばかりなのに、今日は実家に帰るって言うから、そう思うのも当然だろ！」

「まだ言うの！」若菜は真っ赤な顔で目を見開いて遥を睨みつけた。もう一言でも言おうものなら、切り刻んでやるという勢いだった。