第144章 あなたを想う夜(3)

次に、佐藤若菜は田中凛を呼び出した。彼女が販売管理部のマネージャーに異動する件については、意外には思わなかった。おそらく田中大樹が彼女に電話で相談していたのだろう。

「甘美をあなたの専任スタッフとして配属するけど、データや情報に関する仕事は任せないで。彼女は社員の情報を他人に漏らすこともあるし、同じように私たちのデータや顧客情報も漏らす可能性があるわ!この人をどう使うかは、あなたの判断に任せるわ」若菜は最後に注意を促した。

凛は少し驚いたが、すぐに頷いて言った。「はい、わかりました!田中社長の方の仕事は、早急に引き継ぎ先を見つけます」

「うん、手配が済んだら、直接高橋健二に自分と甘美の異動手続きを頼んで。販売管理部は、よろしくね!」午後いっぱい話し合いをした若菜は、喉の渇きを感じていた。

そのまま水の入ったカップを持って立ち上がり、凛をオフィスの外まで見送りながら、お湯を一杯汲んで戻ってきた。

佐藤甘美は彼女が出てくるのを見ると、すぐに頭を下げた。若菜がオフィスに戻ると、彼女はオフィスのドアをじっと見つめ、しばらくぼんやりしていた。

彼女はQQで高橋と凛に、若菜が何を話したのか尋ねたが、二人とも答えなかった。若菜が自分と話をするのをずっと不安に待ち、若菜が水を汲みに出たり、トイレに行くたびに緊張したが、若菜は彼女を呼ぶことはなかった。

このことで彼女の心はさらに不安になった。

甘美の緊張と不安を若菜は見ていたが、彼女の考えや凛が彼女にどんな仕事を任せるかについては気にしていなかった。

彼女は田中大樹が出張中に送ってきた顧客契約書を見ていた。それらには共通点があった:これらの大口顧客はすべて以前「アンジェ」と取引があり、今回は全て独占契約で、初回は無料の商品提供、オープン時には無料の販促ツール支援があった。

これはDF中部地区の歴史上、最も優遇された取引条件だった。

若菜は田中と斎藤遥が最近何を密かに計画していたのか、また遥が出張で何をしていたのかを一気に理解した。

そう考えた矢先、電話がかかってきた。「何時に起きた?今どこ?」遥の声は簡潔で短かったが、彼女には理解できた。

案の定、若菜は顔を赤らめ、最初の質問には答えずに言った。「会社よ、仕事の処理をしてるの」