第152章 どんなに優雅でも所詮は愛人(6)

斉藤空也も市場で長年揉まれてきた策士だ。山田隼真のこの態度を見て、自分が彼の罠にはまったことを悟った。一度口にした言葉は取り消せない。もし今、彼との協力を拒めば、彼が老人のところへ行って何か言えば、自分の長年の野望は水の泡だ。

梟雄が梟雄と呼ばれる所以は、時勢を見極め、大胆で、世間の言う仁義道徳に縛られないからだ。だから空也はすぐに隼真との交渉モードに入った。

「なぜ私を助けるんだ?私がそうすることで、何の得がある?」

「よし!兄弟、率直だな!話がここまで来たからには、じっくり話そうじゃないか…」隼真はグラスを上げ、一気に飲み干した。その目には得意げさと警戒心、そして興奮の光が混ざっていた!

三時間後、二人は個室から出てきた。ユーロアジアの玄関を出ると、一人は左へ、もう一人は右へと別れ、まるでお互いを知らないかのようだった。しかし二人の顔には、野望に満ちた自信に溢れた表情が浮かんでいた!

仕事を終えた佐藤若菜は斎藤氏の駐車場で車を取り、ジムへと向かった。

結婚してからの二ヶ月間、一度もジムに行っていなかった。彼女のヨガインストラクターは既に二回も電話で催促してきていた。今日は斎藤遥が家にいないので、体を動かす良い機会だった!

若菜がヨガウェアに着替えて来たとき、多くの生徒たちは既に到着していた。

「やあ、ローズ、久しぶりね!柔軟性が落ちてないか見てみましょう!」インストラクターのヘイレンは冗談を言いながら彼女の腕を取り、ストレッチを手伝った。

「ヘイレン、二ヶ月ぶりね。ますます綺麗になったわね!」若菜は笑いながら言った。

ヘイレンは中国とフランスのハーフで、非常に美しく、自分の美しさを褒められるのが大好きだった。

「ありがとう。フィナも最近あまり来てないわね?約束してたの?インストラクターを変えるのかと思ったわ!」ヘイレンはダンスミラーの前に立ち、四肢のストレッチをしながら、これからのレッスンのためにウォームアップしていた。

「今度誘ってみるわ!」若菜は適当に答えた。

二年間一緒にヨガをしてきたとはいえ、友達というわけではない。個人的なことは、言わなくて済むなら言わない方がいい。

「いいわね!」ヘイレンは気さくに答えた。