第153章 風雨の夜の帰り人(1)

「同僚として、見過ごすわけにはいかないでしょう!」佐藤若菜は薬局で受け取った薬を彼女に渡した。「もう遅いから、送っていくわ。車は明日フィットネスセンターに取りに行けばいいわ!」

木村飛雄は若菜が前回斎藤遥が市場まで彼女を迎えに来た時と同じ白いBMWを運転しているのを見て、目に暗い影が宿った。

車が動き出すと、窓の外の景色がゆっくりと速く後ろへ流れていく。窓ガラスに映る自分の姿——青あざだらけの惨めな顔は、市場で野菜を売るおばさんと変わらない。それどころか、おばさんたちが持つ世俗的な達観さえ欠けていた。

窓から視線を戻し、静かに運転する若菜を見ると、目は茫然としていた。自分はいつも等価交換を信じ、何かを捨てることで何かを得る!かつて若菜にもそう教えたことがある:この世界に交換できないものなどない、命がけで守る価値のあるものなどない!「資本」があるうちに、自分にもっと多くのチャンスを与えるべきだ。

当時、若菜はただ淡く微笑むだけだった。心の中では、この子は一本気で、バカで頑固で、ただ仕事をするだけだと笑っていた。しかし、彼女こそが大きな知恵を持っていたとは——捨てるべきでないものを捨てれば、得たものも安らかではない!捨てるべきでないものを捨てれば、得たものも長続きしない!

人は、損をした後でこそ、その道理が分かるものだ!そうでなければ、世の中に「後悔」という言葉も「もしも」という言葉もないだろう?

「この一発は、本当に価値があったわ!これからは、自分を賢いと思い込んで愚かに生きるのはやめよう。自分の将来のことも考えないと」変形した顔で、飛雄は悟ったような苦笑いを浮かべた。

「上まで送りましょうか?」車が飛雄のマンションの前に停まった。このエリアは若菜が住む川沿いのマンションから遠くなく、前回近くで買い物をしていた時に彼女と出会ったのもそのためだった。

「今の私の姿じゃ、上がってもらうのは遠慮するわ。今日はありがとう!」飛雄は薬を持って車から降りると、若菜に言った。

相変わらず穏やかで落ち着いた彼女を見ていると、その目に宿る知恵と達観さが、美しさを超えた魅力を放っていた。彼女には不満も嫉妬もなく、心はただ灰色の死んだような静けさだけ——それは運命への屈服だった。