第169章 感情投資(3)

斎藤遥が皆の視線の中でパソコンを持ち、暗い表情で彼を迎えに来た佐藤若菜と共に会社を後にした後、会長の斎藤蓮は第一秘書の渡辺悟に付き添われ、会社の最上階から始めて、一階ずつ視察を行った。各部署の社員たちは心中の恐怖がさらに強まった：会社に大事が起ころうとしているのか？

蓮はこの恐怖の感情が遥の退社と共に、彼の異常な行動によって、このビル内で階ごとに広がっていくのを感じたが、何も表さず、ただ静かに会社の各部署、各隅々を歩き回った。そして働いている全ての社員に親しく挨拶をした。彼は社員の机の上の書類が散らかっているのを見ると、丁寧に手で整理し直した。床に一枚の紙くずがあるのを見ると、かがんで拾い上げゴミ箱に捨てた。会社の壁に掲げられた全ての文書を、両目で長い間見つめ、深い感情を込めて！

そう、彼のこの行動には、意図的に軍心を動揺させる意味もあったが、実際の別れを惜しむ気持ちもあった——彼が生涯をかけて心血を注いだこの場所が、まもなく他人の食い物になるのだ！

最下層まで、ロビーまで、受付まで来ると、彼は微笑みながら山田静に言った。「お嬢さん、頑張りなさい！」

「会長、どうぞお座りください！」静はQQで姉妹たちから会長の行動を既に知っており、彼が既に30階分も歩いたことを知っていた。

なぜか、いつも高みにいるこの会長を見て、彼女は初めて畏怖や緊張を感じなかった。不思議と、心が酸っぱくなる感じがした。それはさっき遥夫妻が暗い表情で去っていく姿を見た時と同じだった：斎藤氏は本当に変わるのだ！

「うん、もう座らなくていい、去る時が来たんだ！」蓮は低い声で言った。この言葉は静に向けたものではなく、悟に向けたものだった！

言い終わると、彼はゆっくりとビルの外に歩み出て、まぶしい陽光を見上げ、少し目を細めた。「悟、君は上がっていいよ、私は一人で少し歩きたい！」そう言うと、悟の返事を待たずに、大股で外へ歩いていった。

悟の差し出した手は宙に浮いたまま、長い間引っ込められなかった。そして静はずっと見ていた、あの少し心酸っぱい眼差しを。

悟が暗い表情で階段を上がった後、静は受付の中に隠れて、泣いた！