「毎年の結婚記念日に、ジミーに二枚の絵を描いてもらいたいの。一枚は家族写真、もう一枚は私たちの生活の様子。あなたとの毎年の感覚を残しておきたいの。赤い頬から白髪になるまで、全部覚えておきたいの!」斎藤遥は右手を伸ばし、彼女の手を優しく握った。
「いいわね、愛って、時には記憶も必要なのかもしれないわ。時々、怖くなることもあるの。日々の生活の細々としたことや、仕事や子育ての忙しさの中で、愛を心の隅に追いやって、埃をかぶらせてしまうんじゃないかって」佐藤若菜はもう片方の手を伸ばし、彼の大きな手を優しく包み込んだ。
絵や表情で愛を記憶に留める。たとえ歳月が過ぎて、濃い愛情が淡い親愛の情に変わっても、この時間を覚えておきたい。愛が昇華するのではなく、発酵するように。
二人が車を停めて幼稚園に着くと、斎藤直哉は担任の先生に手を引かれ、門の前に立っていた。「斎藤直哉くんのお父さん、お母さん、この子ったら、幼稚園初日だからお母さんがきっと彼のことを心配して仕事に集中できないだろうから、早く出てきたいって言ってたんですよ」
「ママ、僕のこと考えて仕事に集中できなかった?」直哉くんは小さな大人のような様子で、若菜の仕事ぶりをチェックしている。
「ちょっとだけよ。午前中はまだ良かったけど、午後になると時間ばかり気にして、直哉のお迎えの時間になったかなとか、直哉がパパとママを見つけられるかなって心配してたの。だから、パパと私も少し早く来ちゃったのよ」若菜は腰をかがめて息子を抱き上げ、自分の過ちを認めた。
「それじゃダメだよ。ほら、直哉は泣かずにちゃんとしてたでしょ!これからは幼稚園に来てるから、ママはちゃんと仕事して。サボっちゃダメだよ。毎日時間通りに来るだけでいいの、早く来なくていいからね!」直哉くんは得意げに笑った。ママが自分と同じように、ずっと彼のことを気にかけていると知っていたのだ。
遥は息子の小生意気な様子を見て、顔中に笑みを浮かべながらも心の中で思った:この子は、見た目は直哉に似ているけど、性格はまさにママそっくりだな—すべて実用性重視!
「直哉、おいで、パパが抱っこするよ」遥は若菜から息子を受け取り、「すごいね」というジェスチャーをした。